そんなやりとりをみた波江は、すかさずにひとこと、感情のこもっていない言葉を吐いた。



「あんたたち、付き合ってるんじゃないの」



ぴしり、真央は血の気がひくような感覚へと陥った。




「付き合ってないよ、だって俺は」

「人間大好きだもんね」

真央は臨也が言葉を言い切る前にかぶさるようにして言葉を繋いだ。

相変わらずの臨也は、口元を緩ませたままだ。




「あーでも、たしか、高校のときに告白はされたかな」

「えっ!」


あれほどまでに感情のこもっていない言葉を吐き捨てていた波江だが、臨也の発言にたいしてだいぶ驚いたようで。
目をおっきくさせている。




「あれ〜?真央、高校のときに俺に愛の告白してくれたじゃない。忘れたの?」

「‥してません」


臨也の楽しそうな顔をみて、あたしは流されてはいけないと思い静かに視線をそらす。



「ふーん」

「若気の至りよ、うん。」

「どうだかねぇ」




実際のところ、あたしは臨也に告白はしていない。
まあ正式には、ね。


よくあるベタなシチュエーションで教室にてクラスメートに告白されたこと。
その当時、変わっている臨也に気があったのは確かだ。だからクラスメートには、それを伝えてお断りしたところ、そこへタイミングよく教室へと入ってきたのが臨也だったりする。


まずい、と思ってあたしはずっとそれを濁し続けたというわけ。



だって、あたしは知っていたから。
両思いになることは絶対にないこと、人間すべてを愛してること、それ以上の存在になどなれるはずがないことを。





「臨也なんか、嫌いだもん」




パタリ、真央は臨也の家を去るために玄関の扉をあけた。




「‥真央、ご飯は‥」

波江のきょとん、とした問いかけに真央はうっすら笑みを浮かべ、

「ん、ごめん。またくるね?」

「あっ‥」




空気に耐えられなくなったあたしは速やかに隣の部屋へと帰宅した。






「素直じゃないな」

「は?」

「また泣くのにね」

「‥‥‥ほんと嫌な人ね、」


波江の言葉に臨也は、静かに笑ってみせた。