「‥‥‥えっと、」







これは運命なのだろうか。
なんて期待してしまいたいところなのだが、それは考えすぎなんだと自分に言い聞かせることにした。





「やあ、久しぶり」




別に、たいして久しぶりでも何でもなくて。高校以来の友人だが、幼なじみみたいな感じで近所をふらふら〜っとしていれば会えるくらいだ。



「‥‥‥わざとなの?」


ただ心中で思ったことを言葉にして吐いてみた。




「ハハハ、やだなぁ。俺をそんなに疑うなんてねぇ。」












数分前、




「あー‥まじ悪いんだけど、別れてくれねーかな。つまんねーつうか、まぁ真央は一人で大丈夫みたいな顔してるから俺の立場ないしな。」



あたしは、

独りが嫌い、なんだよ。


「悪いな、じゃあ」




どうして

わかってくれないの。




「ん、わかった」




なんで

笑ってるの、あたし。






平気、なんかじゃあないんだよ‥‥バカ。




「へへっ‥‥」




彼の姿、正確には数分前までは恋人であった彼の背中を眺めていたけど、みえなくなるとあたしの視界は一気に歪み始めた。


「ぐすっ‥」




いつものことだけど。

あたしは一人で大丈夫そうにみえて、強気な女の子なんだって。



ほんとのところ、

涙脆くて困ったものなのだ。










「相変わらず泣き虫だね」




彼とお別れをした数分後には、隣の住人が怪しい笑みを浮かべてあたしに挨拶、という感じで最初のできごとへと結びつくのだ。




「臨也に言われたくないよ」



絶好のタイミングで現れた彼に真央は疑いの目を向ける。

なんせ彼は高校のときから変わった趣味があり、さらに人間すべてを愛してるときたから厄介である。



そんな姿をみて、臨也はくすりと笑う。



「素直になればいいじゃない」


そんなこと、
自分が一番よくわかってる。



「うるさいな。臨也には関係ないってば!」

「君の観察は、飽きなくてね。楽しませてもらってるよ。」

「‥‥最低」

「それは心外だなぁ」




臨也はそう言うと、真央の髪をくしゃりと撫でた。
慰めるとか暖かい感じではないけれど。