臨也が、目の前にいる。
会いたかった人が今、すぐ近くにいる。




「臨也‥、服がボロボロだし、顔にもキズが‥‥!大丈夫?」


臨也のコートが所々破れていたり、顔にも少しキズができたりしているのをみて、きっと昨日の男たちがかかってきたんだろう。



「こんなときも、君は泣き虫なんだねぇ」


あたしの言葉に答えは返さずに、ただ安心したように彼はにやりと笑みを浮かべていた。

また無造作にあたしの髪を撫でるものだから、昔、初めて臨也に頭を撫でてもらったことを思い出してしまった。



何の感情もなくて、優しく撫でるわけでもなくて。
ただその手からは、温かくて優しい、そんな気持ちが伝わってくるのだ。
それに、今も昔もあたしはひどく安心する。






「‥っ、ごめ‥んね」


とめどなく溢れ出した涙を抑えるように、あたしは臨也の胸に勢いよく飛びついた。


「珍しいよね、君からって。とうとう俺が好きだって認めたの?」

「‥‥大嫌い。」

「昨日俺にキスしときながら、まだ言える?」

「‥‥ッ、大嫌いよ!」



だって、昔からアンタはあたしをみていない。
望んだところで、この気持ちが報われたりなんてしない。



勢いよく顔をあげようとしたのに、一瞬の隙にあたしの唇には柔らかい何かが重なっていた。

気づいたときには、臨也の顔が近くにあって、強く身体を引き寄せられていた。


たった数秒、あたしの頬が一気に紅潮していくのに気づかないわけがなかった。



「‥ッ、な!ななな!」

「離さないよ、俺は」

「‥へ?」

「君が俺から離れようと思ったところで、俺は君を離さないし、君は逃げることさえできない。どうだい?」





ずっと望んでた。
アナタの温もりと、
ハッピーエンドな結末を。




「‥‥逃げないもん!」


そう言って、離さないようと強く強く臨也にしがみついた。



だから、
ちゃんと捕まえていてよ。

泣き虫なあたしを。

ずっと、
あなただけを想うから。




泣き虫ベイベー

ねぇ

今更気づいたみたいね

あの頃から

変わらない気持ちを

持っていたってこと



end.