結局あたしは、
泣き虫から変わらずに
泣き虫のままだった。





「っ、たく‥」

静雄は、少し困った表情を浮かべてまた静かに真央の頭を撫でた。


「‥‥‥‥」


あいつに出会ったときも、
こんな風に撫でてくれてたっけ。

だけど、静雄と違うのは
彼は無表情で撫で続けてたこと。
仕方なくというか、
なんというか‥‥

でも、ただ撫でる手だけは優しくて温かった。
だから、あの日の光景が強くあたしの頭に焼きついている。




「ありがと、静雄」

「これからどうすんだ?」

「‥‥どうしよ」

「俺は、セルティと待ち合わせしてっけど真央も来るか?」

「あたしも行きたい!」


真央がそう言うと静雄は、優しく微笑んでゆっくりと合わせるようにして歩き出した。

それに真央も、ゆっくりと後を追っていく。










【真央も一緒なのか、どうしたんだ?】

「やっほーセルティ!」

「あぁ、たまたま会ったんだよさっきな」

【えっ!!真央、そのケガはっ!?大丈夫なのか?】


言葉にしなくても、セルティを見るかぎり慌てて心配していることがよくわかった。


「ははー大丈夫だよ。静雄が助けてくれたみたいで、ほんと無事なんだから!」

【そ、そうか‥。なら良かった‥‥】


セルティは、やっと落ち着いたようで肩をうずめた。
真央もそれを見て安心したのか笑みをこぼした。


「俺はそろそろ仕事いかねぇとだ。真央、まだ完治してねぇんだから早く帰れよ。」

「あ、うん‥!ありがと」

「もう、無理する必要はねぇだろうよ。向き合ってもダメなら、池袋に来い。」



それは、静雄なりの気遣いと遠回しなエールなんだとあたしは思った。

あたしは、ひらひら手を振り遠くなる彼をみて少しだけどモヤモヤがとれたような気がした。



「しーずーおォォ!!またすぐに池袋に遊びにくるねーッ!!」


あたしがそう叫ぶと、静雄は一回こちらを振り向くと軽く笑ってみせた後、また変わらずに歩き始めたのだ。





【真央は、これからどうするんだ?】

「ふっ‥ちゃんと、帰るよ」




逃げていても

事実を濁し続けても

結局何も変わらないこと。


何も始まらないこと。





あの時の想いも、

今の想いも、

きっと何ひとつ嘘なんかなかったのだ。