目が覚めてから、あたしは、重大な過ちをおかしたことに気づいた。




「‥‥最悪だ」




生憎、臨也も波江も眠っていることがわかり、真央はそれを見計らって家をあとにし、自分の家へと戻った。




「何やってんの、あたし‥」


なんてひとりごとを吐きながら、隣の部屋である情報屋のことを思い出す。


にしても、臨也が余裕をなくしてからかってこない。そのうえに、あんなにどうしようもない表情をみたのは初めてだった。



「ふぅ」

いくら少し傷を負ったからといっても、ずっとこのまま家に居続けるのも退屈だしなぁ。

時計の針は、ぴったり9時を差していた。


真央は、いてもたってもいられなくなり軽くカーディガンを羽織って外に出た。




「うー‥ちょっと、ズキズキするなぁ」


寝不足?それとも考えすぎ?
そんなことを考えながら、真央はズキズキする頭を軽くおさえた。

(あれもこれも、全部、折原臨也のせいだ)


ほんと、調子狂う。


そんなことをブツブツ呟きながら、真央は池袋の街へと静かに繰り出そうとしたのだ。





「よう」


ハタと足が止まったと思うと、目の前にはバーテン服を着た男の姿。



「体は、大丈夫なのか?」

「し、しずお‥」

「聞いてんのか?」


真央は、バーテン服の男が静雄だとわかると、距離を縮め昨日のことを思い出す。



「昨日、静雄‥だよね。
ありがとう、あと迷惑かけちゃってごめんね?」


真央は、困ったようにうっすらと笑みを浮かべた。



「それは、いいけどよ‥
外出ても大丈夫なのか?」

「あ、‥うん。ずっと家は落ち着かなくてね‥‥」

「そうか」


静雄は、ひとこと呟くとたばこの煙を静かに吐き出した。



「あたし、ね」

「ん?」

「もう臨也に会わない」





苦しくなることを知った。

離れられなかった

それは間違えであって、

あたしはただ

離れようとしなかったんだ





「でも、大丈夫だよ」





報われないと思いながら

きっとあの頃から今まで

あいつに惹かれてたんだ





「みんなに出会ったときから、あたし、寂しくなくなったの。」




そう言いながら

流れる涙。



―‥‥なんて矛盾。





「バカだな。
それに趣味悪いヤツだ。」


静雄は、軽く真央の頭を撫でる。




「悪いが、俺はあいつが大嫌いだ。
けどよ、手前はそれでいいのか?それで後悔しねえんだな?」






いいわけない。

後悔しないわけない。

だって

結局あたしはバカで、

報われないの承知で

あいつの隣にいたんだもん。








「‥‥‥‥‥‥バカね」