「と、いうわけなんですよ、銀さん。」
新八は、ソファーでうなだれている彼女をみてハァーと深くため息をついた。
「急に帰ってきてから、ずーっとあの調子なんですよ。」
「はぁ‥ッたく、女ってーのはめんどくせェな」
「真央、どうしたネ。失恋でも「ちょっとォォ神楽ちゃんんん!!」
「神楽ちゃーん、ここはさぁオブラートに包もう。ね、銀さん言ってることわかるよね?」
慌てているふたりをみて、神楽は不満げに目をむけていた。
その様子に銀時と新八は気が気ではないようで、引きつった笑顔を浮かべている。
「じゃあ、私が真央を元気にさせるアル!この神楽様に任せるネ!」
「‥心配なんですけど」
「ほっとけよ。またすぐに元気になんだろ。」
銀時は呑気に、鼻くそをほじっている。
いつもと何ら変わりのない万事屋の光景だ。銀時は、とくに気にする様子もない。
「銀さん゙ん゙ん゙!!!」
しばらく静まり返っていた万事屋も、5分ほど経ったところで鼻水をすする音と掠れた声が部屋中に響き渡った。
「ぬわっ!!‥ちょ、真央ちゃん?涙と鼻水ですごいことになってるよ?」
「銀さーんん‥うーっ、聞いてくださいよぅ‥!」
銀時のことなどお構いなしで彼の着物にしがみつく真央。
「ちょっ‥!オィィイイ!!真央ちゃん!?‥‥え?ちょ、待って!!銀さんまだ心の準備できてないからァァア!!」
「‥ぐすっ‥‥やだ、待てないもん」
(きッきたァァアー!!これか、これが最終兵器なのか!)
「ちょーっ!真央ちゃん落ち着こう?そうだ、落ち着こう!‥‥銀さん色々元気になっちゃうからよ」
何だこの展開。何この美味しい展開。
あれ何で新八たちのヤローは何も言わねェんだ?
えっ何その目?すごく冷めた変態をみるような眼差し!
「トーシロー、女の子と楽しそうに歩いてた。」
「‥‥‥は?」
「銀さん、真央さんはさっき聞いてほしいって言ってたじゃないですか。」
「そうネ。なのに銀ちゃん顔赤くして変なことばっか考えて気持ち悪いネ!死ねよ、テンパっ!」
やっと本題に入ったところで、新八と神楽も話に加わり言葉をはさむ。
「とにかく、真央さん、銀さんはほっておいて僕たちが聞きますよ」
「ありがとー新八くん!」
「へへへ、まぁ大したことじゃない「デレデレしてんじゃねえヨ、ダメガネが!」
「ちょ、神楽ちゃんんん!?」
「おいおーい、新八くんよォ!オメェは問題児を蹴落とし、優等生のフリをして彼女に近づきながら優しい言葉を投げかけモノにしようと企む陰湿な男か!!そういう設定なんだろ、銀さん知ってるんだからな」
「どんな設定だよォォ!!ていうか、僕の何を知ってんですか!銀さんと一緒にしないでくださいよ」
相変わらず真央は銀時の着物にしがみついたまま、3人のやりとりを静かに眺めている。
あれ結局何かあたしのお悩みはなかった的な雰囲気で放置プレイされてるみたいなんだけど、と心の中で呟きながら。
「とにかくーッ!銀さんならトーシローと年齢も近いし性格も微妙に似てるから、意見を聞かせてほしいの!」
視界はぐるりと、あたしの目には銀さんと床だけが映っていた。
必死だったせいか、勢いあまって銀時を押し倒す形になってしまったのだ。
「真央ちゃんんん!!何これドッキリ?銀さんドキドキするけど嬉しいよ。」
「アンタ何ちゃっかり真央さんの腰に手回してんですかァァ!!」
「わ、あ!銀さん、ごめんなさい」
押し倒す形になったところで、銀時はゆっくりと真央の腰に手を回したのだった。
それに気づいた新八は、すぐに銀時にチョップをくらわせた。
「‥たた、た。いってェだろ、新八!何すんだテメェは!」
「オメーこそ何してんだよォォ!こんなとこ土方さんにみつかったら、僕たち殺されますよ」
「そうネ、あのニコ中に全身マヨネーズにされてしまうヨ!」
真央が、銀時の上からゆっくり立ち上がろうとした時だった。
鋭い刃が、一瞬みえたのは。
それも目の前を風がきるような速さで通り過ぎたのだ。
「な、な、なー!!!あっぶねェだろー殺す気かテメェは!!」
何事かと、みんなで飛んできた方をみる。すると、そこには見慣れた人物が、機嫌が悪いようで眼孔を開いたままでつっ立っていた。
「と、十四郎!?」
「オイ、銀髪。ナメたマネしてんじゃねェぞ」
「‥土方くーん、男の嫉妬はみにくいよォ。つーか、真央ちゃんはテメェのじゃねェだろ。何をしようが勝手だろーがよ」
「ちょ、銀さん‥!」
「チッ」
土方は、舌打ちをすると真央のところまでズカズカと歩いていき強引に腕をひっぱった。
「と、しろ‥?」
ハプニングは、突然に
(銀さん大丈夫ですか)
(ったく、死ぬかと思ったぜ)
(でも銀さんも悪ふざけが過ぎてましたよ、死んでもよかったはずですよ)
(そうアル!真央のためにも銀ちゃん一辺死んだ方がよかったネ)
(‥‥‥てめェら)