「何さ、モテるからって!あたしもマヨネーズもほったらかしにして、デートですかコノヤロー」
「‥‥‥」
「あたしだって寂しいのに、全然気づいてくれない」
「あのー真央ちゃん?」
すいません、あの、この子さっき起きてきたと思ったら好きなヤツの愚痴ばっかなんだけどォォォォ!!!
え、なに、銀さん何とかしてー!ってか?いやだよ、めんどくせェよ。そんな可愛い顔してこっちみたってだめだよ、めんどくせェもん!こういうめんどくせェことは新八にでも頼むしかねーよ、あぁそうだよ、そうだよね、ねえ、俺?あれ、なんか俺ひとりで何か長ったらしいこと心ん中で喋ってね?
「ねぇ銀さん、さっきから何ぶつぶつ言ってんの!」
「え!?いや別に、寝言だろ寝言!」
「あ、そう。‥‥‥なわけないだろォォ!!銀さん死んだ魚の目してるけど起きてるじゃないっ!」
真央は、疑いの目で俺の方をじっと見据えている。
「めんどくせェとかめんどくせェとかめんどくせェとかさぁ」
きっ、聞こえてたァアァア!!!!なんなのこの子ォォ!!地獄耳か!地獄耳なのかァア!!いやスーパーイヤーなのかァアコノヤローォォ
「とにかく、聞いてよ、銀さん。乙女というものは、繊細にできているのですヨ。」
「繊細ねぇ‥ハイハイ。」
「それなのに、十四郎くんはあたしのことなんてどうでもいいみたいに、放置プレイなんだよ。あたし、さっちゃんみたいに放置プレイで興奮はしないのにだよ?」
「あぁーでもおめェら他人からみたら普通に仲良しじゃねェかよ。悩むことねェだろ?」
ああ、女心つーのはよくわからねェ。とにかく、めんどくせェということだけだ。
「にしてもよ‥」
「なに?」
銀時はだるそうにソファーに横になると、変なものをみるような目で真央の方に向かって指をさした。
「まぁ聞くべきじゃねェと思ったりもしたが、真央ちゃんよォ‥‥それ、何なの?」
「あぁ!」
真央は、すぐに明るくにこりと笑って「マヨネーズだよ!」とだけ答えた。
「いや、それはわかるよ。銀さんそこまでバカじゃないよ?」
「実はこの中に当たりがあって、マヨネーズ工場を見学できるマヨリーンチケットとマヨリーンストラップが入ってるみたいなのよ!!」
嬉しそうに声をあげて言った真央の周りには大量のマヨネーズの山ができていた。
ああ‥大串くん、か。
「これ当てたらきっと喜ぶから!!いっぱい買ってきちゃったんだよね。でももうマヨリーンストラップはゲット済み!」
嬉しそうに言う真央をみて、こういうヤツを世間一般で恋する乙女というのだろう。
「ただいまー!銀さん、真央ちゃん、帰りましたよー」
「ただいまネ!」
そうこう話しているうちに、新八と神楽が帰ってきたみたいだ。
俺は重い身体をゆっくりと起こした。
「うわ‥!真央さん、それいったい‥‥!!」
「真央、ケチャップ捨ててマヨネーズに乗り換えたアルか!?女心は変わりやすいネ」
「新八くん、神楽ちゃん、おかえり!安心して、あたしはケチャップを裏切らないわ」
真央は、くすくす笑ってからまたマヨネーズを袋から取りだす作業に取りかかった。
「そういえば、僕テレビでみましたよ。たしか、当たりにはマヨネーズの工場見学のチケットとストラップが入ってるんでしたっけ」
「さすが新八くん、そのとおりなのですよぅ!」
真央は、えへへと少し頬を赤らめて笑みを零した。
「土方さんのためにですよね」
「真央は、ニコ中のどこがいいアルか!あんなんただのマヨラーネ!!」
みんなきっとそんな風に思うのだろうな、と真央は思った。
「無愛想で、冷たいけど、誰よりも熱い心を持ってるんだよ!ほんとは、優しいの。」
あたしがそう話し始めると新八くんは、へぇーとニッコリ笑って「ほんと好きなんですね」と言った。
あまりにも真っ直ぐだったので、あたしの頬は次第に熱を増していった。
「十四郎には、笑っていてほしいし、幸せでいてほしい。
それと、あたしの幸せな時間は十四郎の隣にいることなのですっ!」
なんて自分でいっておきながら、さらに熱を帯びていることに気づいた。
「あ‥‥‥出たァアァア!!!」
残り二個のマヨネーズの袋からでたのは、マヨリーン工場見学のチケットだった。
あたしは嬉しさのあまりに2枚のチケットを胸元で強く抱きしめた。
(女心‥‥‥‥乙女つーのは、めんどくせェな、おい)
そんな彼女をみて、銀時はひとりそう思うのだった。
乙女心、憂鬱につき
(そういえば、真央さん!)
(ん?)
(さっき、私と新八、ニコ中みたアルよ)
(え!十四郎いたの?)
(まだ間に合うはずですよ)
(ありがとー!今度、パフェとスコンブとメガネ奢るよ!)
(メガネ奢るって何ィィィ!!!イメチェンかァアァア!?)