ハッピーエンドか
バッドエンドか
恋の結末は、誰も知らない。
だから恋は楽しい。
って、昔、誰かが言っていたような気がする。
「トーシロー!朝ですよー!真央ちゃんですよーう!」
「‥‥‥んァ、」
思い切り、彼の寝ている布団を剥ぎ取れば彼は気怠そうに不機嫌な声を漏らす。
「可愛い真央ちゃんが、やってきましたよーっと!」
「‥‥‥うるせェ」
「お目覚めのハグですか?それともチューですか?」
「‥‥‥‥」
「あたしっ、覚悟できてるからっっ!!」
「だあァァ!!!うるせェエエ!!!」
眼孔開いてるよ、トーシローくんっ!
きっとカルシウムが足りないんだわ。マヨネーズばっか摂取してるから、おかしくなってしまったんだわ。
「おはよう、トーシローくん」
「おはよう、そして帰れ」
「ェエエ!!まだ来たばっかりなのに!まだ触れてもいないのにィィ!!」
寝起きである男、土方十四郎は不機嫌な声で目の前でニコニコ笑う女、真央に言ったのだ。
「ッたく、テメェこんなとこにきて不法侵入だぞ」
「人聞き悪いなぁ!愛の逃避行だもん!」
「良さげにいってるみてーだけど、そらァただの不法侵入だ。わかったら出ていけ!」
トーシローの冷たい言葉にもめげず!というより、いつものことだからあたしにとっては日常の一部のようなものであるのだ。
「やだ。だって、今日はトーシロー、非番なんでしょ?あたしも今日は、本業も万事屋もお仕事お休みだから遊びにいこーよー!」
まるで小さな子供のように真央は、十四郎の腕を引っ張りだだをこねている。
「いかねェよ。非番の日くれーゆっくりさせろ!」
「あたしとゆっくり過ごせばいいじゃん!」
「テメェといると疲れんだよ」
なんだそれ!
聞き捨てならないな、そのセリフは。
「む‥ちょっとくらい構ってくれたっていいじゃない!」
でも、あたしは知っている。
冷たくされても、それはただの冷たさじゃなくて優しさも含まれているって。
プライドは高いし、マヨネーズ好きだし(っていうかマヨラーだし!)、ケチャップ批判するし(ちなみに、あたしはケチャラーなのよ!)、それでもそんな彼は仲間想いであって、人一倍努力家である。
仕事も真面目にこなしているみたいだけど、世間からみたらこんな眼孔開きっぱなしの彼はチンピラだ!
「土方さん、俺が代わりに真央と遊びにいきやすぜ?」
突然、廊下から現れた彼に真央はだいぶ驚いた顔をしている。
「総悟!」
「俺も今日は非番なんでさァ。」
「じゃあ一緒に、」
真央がそう言いかけたときだった。十四郎は真央の腕を強く引っ張った。
「ひ、あっ‥!トーシロー!?」
「生憎、俺は非番だ。テメェは非番じゃねェだろ!またサボる気か!」
「あぁバレやした?」
「テメェ斬るぞ、コラァァアア!!!」
相変わらず、余裕の笑みを浮かべている総悟。
どうやら彼は非番でなく、ただ単にサボる気満々だったようだ。
「‥チッ」
「トーシロー!」
舌打ちをする十四郎をよそに真央の頬は徐々に緩みはじめた。
「うるせェ。とりあえず飯つきあえ、飯!」
「うんっ!あ、オムライスがいいなぁ!ケチャップたっぷり‥‥おいしいそゥゥウ!!」
「テメェ喧嘩売ってンのか!!ンなもん、マヨネーズにきまってんだろが」
あたしは、このちょっとした優しさにいつも甘えている。
そして、離せないでいる。
「マヨネーズよりケチャップ!ケチャップ王妃なめんなよ、土方コノヤロー!」
「あァ?マヨリーンなめんな。マヨネーズはな、調味料として幅広く使えんだよ」
「ふっ、甘いな。ケチャップなんかね、ぶっちゅーて手のひらに出したらさぁスゴイ!なんじゃこりゃぁああ!!!」
「誰がそんなモノマネするかよ。ケチャップは、血じゃねえか。マヨネーズはな、清潔な美だぞ!」
まだ、このままでいい。
変わらないでいて。
「ケチャップだって可愛いんだよ、赤く頬染めてるし」
「どこに頬があるんだよォォ!!‥‥って、どさくさに紛れて手繋いでんじゃねェよ、テメェェエエ!!!!」
今はまだこの温もりを
(感じていたいから、)
(離したくないのよ)