重たい瞼をあけると、白い世界が目の前に広がっていた。
ツン、と薬の独特な匂いがやたらと鼻を刺激させた。
「ん‥‥っ」
あたしが動くとすぐに視界に入ってきた銀色の髪が揺れた。
「ぎ、ん‥‥さん?」
「真央!!!」
銀さんは、血相を変えてずいっとあたしの顔を覗きこむ。
「真央!大丈夫アルか!?」
「真央さん!!意識戻ったみたいで良かったです‥‥。」
銀さんの横には見慣れた二人‥‥瞳を潤ませた神楽ちゃんに、一気に気が抜けたのかヘニャリと笑う新八くんがいた。
「ここはっ‥!?‥‥っ!!いたたた‥‥!」
状況が理解できなかったため一気に起きあがると、ズシリと腹部に痛みが走った。
「はは‥。そか、あたし怪我したのか‥‥」
「オイ、傷口ひらくからあんまり動くんじゃねェぞ」
「真央、無理しちゃだめアル」
神楽ちゃんが悲しそうな顔をするものだから、大丈夫だよって優しく頭を撫でた。
「ん。心配させてごめんね?」
「早くよくなるように、安静にしててくださいね。」
「もう無茶はするんじゃねェよ。」
そうか、
銀さんたちが助けにきてくれて、それから‥‥‥
あれ、
あたし何で撃たれたんだろう。
避けきれなかったのだろうか。
‥‥‥何か、
何か大切なことが、
「土方くん、いつまでそこにいるつもりー?」
「チッ‥‥‥うるせェ、万事屋」
あった、はず。
なんだけど‥‥‥
「‥‥‥‥大丈夫か?」
長身で黒髪の眼孔の開いた男が、ぶっきらぼうに問いかけてくる。
「‥‥はい、」
隊服を着ているということは、真撰組なのだろうか。
「あ、の‥‥‥‥助けてくれた、方ですか?」
遠い記憶から、
あたしの声が聞こえる
届きたくて触れたくて
懸命に後を追うあたしがいて
誰かわからないのだけど
届かなくて
追いつかなくて
だけどそのたびに
手を差し伸べてくれる誰か
知ってるはずなのに
わからなくて
「安静にしていれば、短期間で完治はします。ですが‥‥‥、
一時的なショックによって一部の記憶が失われているかもしれません。
残念ながら、時間が経って記憶が戻るという確証はありません。
ずっとその一部の記憶が戻らないといった可能性もあります。」
「あ、の。助けてくださってありがとうございました‥!」
見えない明日
大切な何かを
ポッカリと失った気がした