あたしの彼氏は、

奥手で照れ屋で、

だけど優しくて

思いやりがある人だ。












いいとこをあげるならば、
そんな感じで
いくつか思い浮かぶわけで。


反対に不満なところも、
いくつか思い浮かぶ。

だけど、いいとこ以上に気になってしまう不満。







「帝人は、あたしのこと、好きじゃないと思うんだよね」

「は?」


虚しくなるような言葉を淡々と吐いた真央の隣を歩く、友人の正臣は冷たい。



「だから、」

「いや、よーくわかった。だがな、それは被害妄想が激しい!」

ビッシーと人差し指を真央に向ける正臣。



「てか、人を指差しちゃいけませんってお母さんに言われなかった?」

「‥‥‥」




あたしと帝人は、付き合って3ヵ月。そして正臣は共通の友人であるのだ。




「3ヵ月だよ。好きも言われてない!!抱きしめられてもない!!チューもしてない!!手だって‥‥‥!!」


あわわわ‥。

これじゃあ友達だよね、

格上げしたとこで

親友くらいだよね。




「ナンパしてるくらいだもん!!あたしに助言してください、ほんと、まじで!」


正臣はニヤリと笑みを浮かべ、



「参ったなー。オレこんなに頼りにされちゃって、モテ期到来みたいな?いや、まてよ。だからってオレに惚れるなよ?お前には帝人ってヤツがいる、オレには女の子がたくさん」

「あーもう。いい加減にしてくれないと、海に沈めるわよ。」

「あれー何かサラッと怖いこと、言っちゃった感じー?」

「犯すぞ、コノヤロウ。」

「キャアー真央ちゃんのエッチー!」





「あ、おはようー」



そんなやりとりを正臣と繰り広げていたら、いつものようにひょこっと彼氏である帝人がにこっと笑顔で現れた。



「おはよっ、帝人」

「みかどー、お前の彼女、凶暴。正臣くんには手に負えないのでどうにかしてくれー」

「なっ‥!」

「かっ、彼女かぁ‥‥」


正臣の言葉に帝人は、顔を真っ赤にしてブツブツ何か言っているようだ。



「帝人?」

「ハッ!!なっな、なに!?」

「大丈夫?」

「えっ、うん。」





あたしは、彼女。
帝人は、彼氏。

しかし、こんな状況を赤の他人がみたところで、ただの友達にしかみえないのだろう。

むしろ正臣といたとこで、彼氏だと勘違いされてしまいそうなとこだ。





「よーく聞けよ?」

「うっうん!!」


帝人がひとりで顔を赤くさせちゃったりなんかしたりしてる間に、正臣は真央のそばで小さく耳打ちをした。

真央は、すぐに助言してくれるのだと気づきゴクリと息をのんだ。



「とにかく帝人だけじゃなくて、それ以上に俺と話すこと!」

「‥は?」


言っている意味がわからなかったが、真央は少しでも帝人と距離を縮めるために正臣に賭けることにしたのだ。


「アーユーオーケイ?」

「オーケイ!!」






とにかく、その日は、正臣の言われた通りに帝人と話す以上に正臣と話をした。

ちょっと寂しいけど、
これも愛の試練なのだ‥!

強く心に言い聞かせた。






「あー帝人、悪いな。ちょっと真央に用事があるから先に帰っててくんね?」

「ちょ‥!正臣!?」


放課後、教室に集まった3人だったけど突然の正臣の発言にあたしは動揺した。

さ、さすがにこれは‥
不自然なんじゃあ?



「‥わかった。じゃあ、先帰るね真央ちゃん!」



笑顔で教室から去っていく帝人に、真央は何も言えなかった。





「‥‥‥あは、は」

「真央?作戦のつもりだったんだけど、ごめん‥‥」



帝人にとって、
あたしが一緒に帰れなくても
いいってこと?

正臣と帰れってこと?



「ふっ‥‥え‥‥っ」






バカみたいバカみたい
あたしだけ好きで

一方通行だなんて

惨めすぎるよバカ‥









「真央ちゃん!!かっかか、かえろう!!」


勢いよくドアが開いたかと思うと、息を切らして顔を真っ赤にさせた帝人の姿があった。



「み、‥‥かど」

「なっ!!なんで泣いてるの!?正臣に何か言われた!?」

「帝人ー俺は帰るぞー、それとお前が泣かせた!じゃあな」

「えっえええ!ぼっ僕!?ごっごめん!!泣かないで‥」




涙で滲んだ瞳には
帝人が困って慌てている姿が映し出されていた。





「帝人はっ‥‥あたしのこと、好き?」

「ふえっ!?」


帝人、
耳まで真っ赤だよ?



「ふ‥えっ、好きなのは、あっあたしだけなのかな‥っ?
帝人は、ちゅうも手もっ‥うぐっ、繋いでくれないっ!帝人はっ」



あたしが全部言い終わる前に
唇に柔らかな感触。


あたしの唇に、帝人の唇が触れ、重なった。




「!!」

「ごっごごごめん!!
ちゃ、ちゃんとすっ好きだから!!正臣には渡さない‥から!!」

「なんで正臣‥?」

「楽しそうに話してるから‥」


耳まで真っ赤にした帝人は、俯きながら言葉を紡ぎ出す。


それって、

ねえ、



「ヤキモチ?」

「やっ!!!わ、わわわ」



さらに顔を真っ赤にさせた帝人に、真央はくすりと笑い声を漏らした。

そんな君も

愛しいよ。


真っ赤になって

一生懸命に言葉にする

君が、ね。






奥手な彼と鈍感な彼女

(お騒がせなカッポーだぜ)







▼鈍感と奥手なカッポーでした!
正臣くんは、帝人をよく知っているからヤキモチ大作戦を決行したわけでーす★
最終的に正臣くんがすれ違うカッポーの恋のキューピッドになってくれたわけですっ(笑)


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