何て厄介なのだろう。
こういった関係は、
なんなのだろうか。


ある男は、じっとそんなことを考え続けていた。










「ドタチン!ねえ、ドタチンってば!」

ひょこひょこと、ある男、門田京平に向かって何かを訴えようとしている少女。


「‥‥」

「そうやって無視するのー?」


たった1歳違うだけだ。
それだけでこんなにも背丈が小さくて、顔が幼くみえるものなのだろうか。



「その呼び方はヤメろ。」

「ムゥ」

冷静に言い放つ門田にたいして、少女、真央は思い切り唇を尖らせる。


「はぁ‥‥
そして、なんでお前がこんなとこにいんだよ。」

「それはねっ、あのねっ」

「いや、聞いた俺が悪かった。聞かなかったことにしてくれ。」


この少女、真央と門田は高校時代から一緒であり、腐れ縁のようなものだ。

一緒にいたいとかいたくないとかそういうことを思って、こうやって顔をあわせてるわけではないと門田自身は思っている。



「ドタチン、お父さんみたいだよねぇ」

バンに乗り込むと後部座席の方から狩沢がにやり笑みを浮かべて言った。

「だめすよ!あんまり冷たくしてると家出少女になっちゃうっす。」

遊馬崎も後に続けて口にする。





「およよ?かりにゃん!ゆまっち!」

真央もバンの扉をあけて後部座席へと乗り込んでいた。


「真央!?お前、降りろって」

「ムゥ」

真央はまた頬を膨らませ唇を尖らせた。



「ドタチン‥」

「今度は、なんだよ」

「ドタチンは優しい。」

「ん?」

「でも‥‥‥‥」



真央は少し悲しそうな顔で地面を見下ろしていた。

言葉を紡ごう、紡ごうしているようだが、それから言葉は一向もでてこないままだ。





「ドタチンは、保護者みたいに心配してくれて優しいよ!」

再度顔をあげたかと思うと真央はまた真っ直ぐと笑みを漏らした。

「でも、あたしには冷たいよね」


突き放すように。


しかし、門田自身は真央を冷たく拒絶したつもりもないし、ましてやキライなわけでもない。




「だから、ここには来るなってことだ。」

「‥‥‥そう」


彼女はまたしゅんと肩を竦めたが、またいつもの笑顔を門田に向けた。


「それでも、あたしは迷わずドタチンのとこに行くよ。たとえ、くるなって言われてもだよ。」


そんな真央をよそに門田は盛大なため息をついた。




「だったら、ちゃんと連絡をよこせよ。」

「へ?」


真央は、門田の言葉の意味がわからずに目をキョトンとさせている。




「危ないからだよ。
だから、わかったな!?」

「へ‥‥」


しばらく経って真央は、理解したのだろうか満面の笑みを浮かべていた。



「ドタチン、ドタチン」

真央の言葉に少しヤケになった門田は勢いよく振り向こうとした。


「だから、っ!‥‥!?」



その、瞬間だった。
ふにゅっと門田の頬に真央の柔らかい唇が触れた。




「えへ、不意打ち。」

「‥‥‥」

門田は、しばらくフリーズ。
真央も少し頬を赤く染めながらも笑っている。






「あわーやっちゃったねぇ」

「俺もされたいっすー!」

後部座席にいる遊馬崎と狩沢は小さな声でさきほどのことで盛り上がっているようだ。







「何、した」

「ほっぺちゅー」

「お前は、」

「好きなんだよドタチン!」


少しハニかんでみせたその笑顔に、門田の心臓は不覚にもドキリと音を鳴らす。




いつだってそうだった。
なんだかんだでいつも真央には、かなわない。
それと同時に放っておけないときたものだ。

それでも笑って、いつも一番近くにいた。




そんなことを考えてまた門田は小さくため息をついた。

少し頬を緩ませながら。










これは恋ですか



(ねぇ知ってたー?)
(なんすかなんすか!)
(最近切り裂き魔の事件また増えてきたみたいじゃない?あとカラーギャングとか)
(みたいっすねー)
(それがさー心配みたいなんだよね、ドタチン)
(門田さんやるっすね!)
(俺の真央が!ってね、ドタチンまじやるぅ〜)


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