「うわぁぁあん!なんでなんで、あたしがこんなことになってるんでしょうかー」
周りの声など気にしない様子で少女は声をあげている。
両手には、スーパーの袋。
「キミがいいだしたのに?」
「うっ」
少女、坂田真央とその隣を歩く折原臨也は、昼下がりに近くのスーパーへと買い出しに来ていた。
「臨也さん‥あたし、か弱きおなごなんですよ。」
「あなご?」
「おーんーなーのーこー!」
「あぁ。」
「え、反応それだけですか!?」
真央の両手にスーパーの袋があるにも関わらず、手ぶらで軽快に歩く臨也。
それも、1時間半前のできごとによりこういった光景になっている。
「ジャンケンで負けた方が罰ゲームだなんて、ね」
「むむ。臨也さんもしかして何かズルしたでしょ!?」
「ヤレヤレ、俺はそんな卑怯でダークな人間じゃないよ?」
余裕な態度の臨也にたいして真央は、まだ納得していない様子だ。
「‥‥‥うざや」
「ん?何か言った?」
ぼそりと呟いた言葉に臨也は、あからさまに聞き返す。
気にいらなかったのか、臨也は歩いていた足を速めて真央と距離を広げていた。
それでも真央は、できるかぎりで重い荷物を両手にトテトテと足を歩める。
「ちょ‥‥っ!臨也さん、はや‥い!」
追いつくことができなくなった真央は、諦めて最初の歩幅に戻すことにした。
「あれ‥‥」
すると、あることに気づいた。
臨也があれほど速く歩けるにも関わらず、真央の隣に並んでいた。ということは、彼はわざわざ歩幅をあわせてくれていたのだろうか、と。
彼なりの優しさでは、ないのだろうか。
そんなことを考えているうちに、彼の姿がみえないことに気づいて真央は立ち止まる。
「‥‥いない」
真央は、置いてかれてしまった悲しさと独りになってしまったという不安に押しつぶされていた。
「まったく、真央ちゃんは馬鹿だよねぇ。」
「なっ‥!」
いつの間にか後ろを振り向くと臨也の姿があった。
「泣きそうな顔してるよ。」
「な、してないよっ!」
相変わらず臨也は余裕な態度で笑みを漏らしている。
「まっ、キミらしいよ。真央ちゃん」
片手が軽くなったかと思うと、片方のスーパーの袋は臨也が持っていた。
「罰ゲームね。」
臨也は、そう言って笑みを浮かべている。
そして、お互いにあいている方の手はしっかり繋がれて。
真央は、彼のちょっとした優しさを噛みしめながら手の温かさを静かに感じていた。
罰ゲーム
(臨也さん、さあ勝負!!)
(まったくキミも懲りないね)
(次は絶対勝つんだもん)
そして、言うんだ
「あたしを好きになって」