あたしには、
心から愛する人がいる。
これからも、ずっと、ずっと、そばにいたい。彼の隣にいるべきなのは、あたしであってほしい、ずっと心から願っていた。
「わぁー流れ星!」
「すげぇな、たっくさん!」
「わあー」
今日は、正臣に誘われて真央と帝人は三人で東池袋公園へと訪れていた。
「またこうやって、みんなでいれるとは限らねーしさ。」
「そう、だよね」
「卒業だってするしね」
それでも帝人が言うように、繋がりを持っていたかった。
変わりのない日常とか、変わりのない関係を保っていたかったんだろうな。
(流れ星‥‥、どうか、どうか‥‥‥)
「正臣、」
帰り道、帝人と別れた後、真央の隣に並ぶ正臣の名前を小さく呼んだ。
消えて、しまいそうなくらいに。
「どうした?」
「ありがと、ね。」
何も言わずに、
そばにいさせてくれた君へ。
あたしの気持ちに応えるようにして、全力で愛を注いでくれた君へ。
「‥うん、俺も。」
知っていたの、全部。
けれど、君が好きだから、それでも良かったのだ。
正臣の少しかすれた声に、あたしの胸はちくり痛んだ。
あたしと正臣のわずかな距離が、もうさよならを告げているのだと気づくのにはそう時間はかからなかった。
「大好き、だったよ」
ありがとう。
さようなら。
あたしの声は、静かに夜の街へと消えた。
それから黄巾賊による抗争が終わったあと、彼は、紀田正臣は沙樹さんと二人で池袋から姿を消した。
自然と涙はでなかった。
というより、泣けなかったのかもしれないけれど。
でも、彼があたしの心の中で最愛の人として存在していたことは、これから先もずっと、ずっと、変わることはなく。心に刻まれるのだ。
それだけで、真央は少しだけ暖かい気持ちになれた気がした。
彼は、帰るべきである最愛の彼女の元へと帰っていったのだから。
流れ星
(‥‥‥どうか、どうか、彼が幸せでありますように、)