ねえ、

あたしをみて

この気持ちに

気づいてよ









「ゆまっちゆまっち!!」

「狩沢さん、そんなに嬉しそうにどうしたんスか」



あたしたちは、いつものように渡草っちが運転する車に集っていた。
助手席には、ドタチン。
何か考えごとでもしているのだろうか、窓の外を静かに眺めていた。

その姿をまた静かにながめていたのは、あたしこと真央である。


そして、その後ろには狩沢ちゃんとゆまっちが楽しそうに雑談ならぬ電撃文庫やら何やらの話を始めている。


あたしは振り向かずに、小さなため息をついた。




「真央、どうした?」


さっきまで窓の外を眺めていたはずのドタチンが、ため息に気づいたのだろうかこちらへと声をかけてくる。


「う‥あ、何でもないよ!」


真央は、慌てて手を左右に振って笑う。

ならいいけど、と言ってドタチンはまた前に向き直って静かに窓の外へ目を向けた。




「ねえねえ!!真央!!どう思う!?」

「絶対ないっスよ!」


後ろからいきなり狩沢ちゃんとゆまっちが身を乗り出してきたことに、真央は小さく反応した。


「へっ!?」

「イザイザとシズちゃんだよ!」

「それ狩沢さんだけっスよ」

「え‥っと?」


真央は、ふたりの勢いに押され返す言葉もなくなる。

(‥‥話が、みえない)




「いーや!絶対あの2人はボーイズにラブってるんだよ!」

「ないっス」

「でも、私はそんな禁断も応援したいと思ってるんだから!」


ついに、またふたりの世界へと移り変わってしまった。



(‥‥面白くない)







あたしは、ちょっと前からゆまっちに気があって。

だけど、当の本人は二次元とやらにしか興味がなかった。
でも、狩沢ちゃんといるときや話してるときは、とても楽しそうで‥出会った当初からあたしの入る隙なんてなかった。





「渡草っち!」

さすがに同じ空間で、こんな風に見せつけられたら嫌でも惨めで悲しい気持ちになる。


きっと、ゆまっちは



「あの、あたし大事な用事思い出したから降ろしてもらえないかな?」


二次元以上に、
狩沢ちゃんが好きなんだ。



「用事?」

「あはは、忘れてたの。」


ドタチンは、不思議そうにあたしをみていたけど、気づかれないようにと笑顔をつくってみせた。





「ありがとう、またね」

「おう、気をつけてな」

「うん!」


あたしは車を静かに降りて、渡草っちとドタチンに手を振った。



‥‥‥楽しそうなふたりは、みたくなくて。











「‥‥‥‥」


真央は、すぐ反対側を向いて歩き出した。


「‥‥‥もう、やだ」



心の中に渦巻く黒い塊のようなもの。
それが"嫉妬"であって醜いものだとは思いたくなかった。



薄暗くなった街に、ひとり。
さらに虚しさと悲しさが溢れだしてきてしまった。





「真央ちゃん」


名前を呼ばれたのと同時に手をがっしりと握られ、真央は思わず足を止めた。


でも、振り向かなくてもそれが誰かなんて考えるほどの時間なんて必要なくて。
聞き慣れた声ですぐ、真央は自分が愛しいと思う相手だとわかったのだ。






「ゆ、ま‥‥ち?」

「大事な用事って、男っスか?」

「えっ?」

びっくりして振り向いた真央の目には、ゆまっちの険しい表情が映し出されていた。



「そんなに大事な人?」

「何の、話‥?」


わけがわからずに、真央はゆまっちを真っ直ぐみて問いかけた。


「男なんスよね‥?」

「え、あ‥手、離して」


あまりにみたことのない彼の表情に、真央は一歩後ずさる。




「離さないっス」


なんで。


そんな風にされたら、


期待しちゃうじゃない。







「‥!!ごっごめん!泣かすつもりは、なかったんスけど‥」


ポタリ ポタリ
真央の瞳から涙が零れた

それをみたゆまっちは、慌てて真央の手を離した。




「なん‥‥で?」

「え?」

「ゆまっちは、狩沢ちゃんが好きなんでしょ‥?あたしといたら誤解され」



一生懸命に言葉を紡ぐ真央が言い終わる前に、ゆまっちは強く真央の腕をひいて自分の方へと抱き寄せた。




「ゆっ‥ゆゆゆまっち!?」

「何を誤解してんスか。
俺の好きな人は、真央ちゃんだけっスよ。」


抱きしめられた体から、
ゆまっちの熱が伝わる。





「あたし、もっ‥!」



さらに涙が零れ、あたしも強くゆまっちを抱きしめた。














「はー、さっきのゆまっち本当怖かったよねー」

「ったく、遊馬崎のヤツ。真央のことになると、何するかわかんねえな。」

「まぁお互いに勘違いしてたみたいだけど」















ねえ


好きって言って


あたしを見て





「ゆまっち、‥好き」









二次元よりも、

なによりも
真央ちゃんが
好きだよ。


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