あいついつか拐われるんじゃなかろうかと不安な朝。ずっこけて怪我してないかと心配する昼。災難に見舞われて困ってるんじゃないかと気掛かりな夕方。夜、やっと名前と対面してから息を吐くのが日課だった。


「食満くん」
「……飯行くか…」
「うん、…?」
「なに。飯まだだろ?」
「あ、なん、なんでもな」
「なに」


ぐっと手を握りしめると細い声でぐだぐだ言う。一度ちらりと窺うだけの視線は行く末、床である。俺はやっぱり怖い顔をしているんだろうか。もう片手で自分の頬を撫でていると名前はなぜか怯えていた。


「…なんか」
「え?」
「お、怒っ…?」
「いや、怒ってねーし。悪かったよ、今更だけど元からこういう顔なの。気にすんな」


飯だ飯、そう言って手を引くとそのままおとなしくついてくる。まだ会話はぎこちない。今日何してた?なんてわざわざ聞かなくとも暇さえあれば名前の姿を追いかけているのだから大体は把握している。ああそうだよな、お前なにもないとこですっ転んでたよな、あとそうだ、あいつに強制的に委員会に引きずられてただろ。え?なんで知ってるのって?そりゃあお前――…