忍者に向かない性格というものがある。強欲、優柔不断、そして優しすぎる奴。忍者になるための学校だというのにうちにはそんな連中がごろごろいるが、まぁ人間性はどうあれなろうと努力すれば形式的にはなれるものだからいずれも特に差し支えはない。極論だが忍者になる為の本質というのは性格云々よりもまず命を賭して任務に臨む度胸があるか否かに重きが置かれるのではないだろうか。
しかし、だ。若干観点は逸れるが全く他人とコミュニケーションが取れない人物というのはどうだろう。そもそも忍者は単体でやれるものではなく誰かの依頼ありきの職業で、何をするでも人と関わらなければならない。語弊は少なからずあるが忍者そのものの意義としてはこれが概ね当てはまると思う。

本題だが、ここに忍者を目指す一人の人間がいるとして、少し考えてほしい。もしそいつが日常会話でさえ困難だとしたら?会話どころか視線さえろくに合わせず口をつぐむこと貝の如し、青くさせた顔の額に冷や汗を滲ませておどおどと黙秘するばかりの人間はどうだろう?
そんな奴そもそも忍者の学校になんざ来ないだろう、などと鼻で笑うだろうか。驚くかもしれないが、その稀有な人物は確かに学園内に存在するうえこちらのよく知る相手だった。

俺の彼女だ。