「コース」
「スイカ」


特にやることもないので。


「カラス」
「水泳」


しりとりをやろうと吹っかけたら軽く乗った三之助。しかし先程からやたら「す」ばっかり寄越してくる。それに気が付いたとき、三之助に「なんで」と聞いたら「早くしろよ馬鹿」とけなされ結局教えてはくれなかった。


「椅子」
「す、す、隙間」
「升」
「…水素?」


言っては返され成す術もなく、あまりのしつこさに新手のいじめかと思う。事実三之助は意地の悪い根性を持っていたし、私はしょっちゅう餌食になっていた。
不審そうな視線を送ってみても特に気にすることなく淡々としりとりは続く。


「ソース」


またかよ。
ならばこちらからも返してやろう悪戯心。


「酢」


三之助を真似てにやりと笑ってみせたら、本人は舌打ちして机を叩いた。普通のしりとりでそんな仕種されたのは初めてだ。意地よりもまず機嫌が悪いのだろうか。


「す、」
「うん?」


もういい加減ネタ切れだ。なんで顔赤いの?変なの。
得体の知れない三之助の表情変化を見てじりじり背に汗が滲むのを感じる。暑い。

もうやめにしよう。
私が切り出す前に三之助が煩わしそうに言った。


「“好き”って言えよ!」


単語で続いていた殺伐としたしりとりがいきなり文章に変わったものだからすぐに理解は出来なかった。無理に理解してみても内容が有り得ないっていうか、なにそれ!この流れでそんな馬鹿な!


「え、えぇー」
「…返事は」
「よ…よ…」
「…………」
「…よろしくお願いします?」
「疑問系かよ」


やっと三之助が笑ってしりとりは終了した。