早く帰ってきて!


「っわー!しんべえ鼻水かめ!桶が腐る!」
「きゃー!喜三太ナメクジしまって!桶が腐る!」


もうぐったぐただ。

委員長が実習で姿を消してから三日になる。
名前と富松はその穴を埋めるべく奮闘してはみるものの…


「こいつらの世話富松に頼んだじゃん、何してるの!?」
「アホかこいつら止まれっつって止まる様な奴らじゃねーだろが!そんならお前が世話しろ!」
「うるさいバーカ!バカとま!」
「お前女だからって容赦し…」

「おーい元気かー」


三日分の鬱憤がぶち撒けられ白熱する教室。
不意に戸が開いて、聞き慣れた声が。


「……けっ、」


食満先輩!


あぁやっぱりこの空気いいな、と笑顔を振り撒くその人は我らが用具委員長だ。
一年連中がわらわらと走り寄ると一人一人高く抱きかかえて挨拶をする様はもうお父さんにしか見えない。

唐突なアットホーム気分に勢いを削がれた二人。
それに気付いた食満が声をかける。


「なんだ、お前ら相変わらず喧嘩してるのか?」
「してません!」
「おかえりなさい委員長!」
「ただいま」


先ほどの一年よろしく走り寄るが、抱かれる気にはどうしてもならなかった。またもや揃ってまごついていると同時にわしっと頭を掴まれる。
首をすくめた二人の頭を委員長はそのまま撫で回してぐしゃぐしゃにした。


「俺のいない間よくやってくれたな」
「はい!富松はともかく私は精一杯頑張りました!」
「おまっ」
「うん、わかってるから喧嘩はよせよ」


ほら、土産だ。

これまた唐突に丸っこいまんじゅうが手渡された。
周りを見れば一年連中はもりもりと実に美味そうに食している。
食満が茶を取りに場を後にすると、富松が「あの人に迷惑かけるのだけはよそうぜ」と呟いた。
名前は珍しく大人しく頷き、まんじゅうに噛じりついた。