「あのさ、名前」
「…はい」
「いくら僕だって限界が有るんだよ一応人間だからさ」
「………はい」


不穏な空気

何が悪いって、いや私なんだけどさ…


「で?寝たの?」
「ねっ!?寝てないよ失礼な!!」
「えーどうだろ、名前はあばずれだし」
「あばずれ…」
「まぁ万が一寝てたら殺すけど」
「ひえー!」
「…癖って治んないんだよ」


どんな良い薬使おうとその人の意志が無かったら何にもならない
良い薬なんて無いけど
その人は飲もうとすらしないかもだけど

彼は伏し目がちに言う
心配そうな顔が好きだな、うん


「そんなに魅力無いかなぁ僕」
「いや、そういうわけじゃないけど」
「じゃあ何とかしてくんない?」


浮気癖なんて人として最低だよ


(わかってますよ)


理解しながらも
でも伊作には多分理解されないだろなーなんて


「お願いだから治してよ?」
「…それは伊作の役目でしょ」
「キッツイなぁ」


ギュ、と抱き締められる

一番落ち着くのは伊作なのに


「愛してるから」


どうか僕だけ

甘い言葉で口付けられながらも


(言える訳無い)


私が浮気するのは伊作の気を引きたいからだなんて


「早く治してね」
「はい」
「今後やったら…」
「ひえー!」



(口が裂けても言うまいさ)


治したいならもっと愛を、頂戴よ