彼女に呼び出された六人はおとなしく長机についた。

どうせろくでもない。そんな予感がする。見上げれば、今日も絶好調に偉そうな仁王立ちの名前がいた。


「全員揃ったわね」


そう言って後ろ手で襖を閉める。もう無事では帰れない。五体満足ではいられない。そんな気がして小平太はひっそり血の気を引かせていた。そんな彼の心を踏み荒らすかのように荒々しい足音が畳を鳴らす。


「はいはいどいて!」


どかっ


「ごぁ!」
「何その声!引くんだけど」
「人を蹴っといてその態度はなんだお前!」
「よしなよ文次郎…敵う訳がないんだから」
「さすが伊作はわきまえてるわね」
「うん、まぁ…」
「そんなこんなで早速本題に移らせてもらうけど」


だん!

机に足を乗せる。喧嘩上等もいいところだ。誰一人として名前に視線を合わせようとしない。
そんな一同を気にするでもなく彼女は言った。


「我が広報委員会の今月の特集内容についてなんだけど」


やっぱりか。

見据えた内容があまりにもドンピシャで食満はその場に脱力した。第一揃っている面子が委員長ばかりなのだし、それでもまぁ以前みたいにその場でバトルロワイヤルしろと命令されるよりは穏便かもしれない。

隣の仙蔵も表情にこそ出さないが心底呆れているに違いなかった。


「なに、揃いも揃ってノーリアクション?」
「僕らを呼び出したのって」
「委員会特集にしようと思って」
「くだらねー」
「あんたの夕飯鉄粉握り飯で決まりだわ」
「唐突じゃんねー」
「こうでもしなきゃ活動にならないのよバカ松」
「バ…!?」
「つってもなぁ」
「お前しかいないだろうに広報委員」
「なんか文句あんの?」
「…………」


険悪な視線に堪えきれずあの仙蔵までもが黙り込んでしまう。

重い空気が辺りに立ち込める。
彼女に目を付けられると後々厄介なのだ。どれだけ頭を下げて許しを請いても全く通じず延々といびられ続ける。

とりあえず文次郎の夕飯は鉄粉握り飯という強制イベントは決定された。


「でも体育は嫌なのよねー常識外れの体力に追いつけないし」
「ありがとう!」
「褒めてないから。…作法はなんとなく気兼ねするっていうかあんな美形連中に囲まれたら自制心きかないっていうか」
「少しは耐えろ」
「黙れ。用具はヘタレだし」
「ヘタレじゃねぇ」
「煩い。会計はギンギンだし」
「おいコラ」
「死ね。保健は不運だし」
「…………」
「という訳で今月の特集は『図書室の妖精・中在家長次』に決定しました」


解散!

高らかに響いた彼女の声、長次以外の五人は何故自分がここにいるのかどうしても理解できなかった。