快晴の下、血塗れのまま走り回っている。
「七松くん、本当に大丈夫なの」
「別にー…お前は?」
「あなたのおかげでどうにか」
「そっか」
あんまり気にするなよーと背が語る。聞こえないようにため息を吐いた。
これだから嫌なのだ、男子とペアの実習は。然して優秀でもない自分みたいな奴は確実に足手まといになる。
隠し文の在り処である城は予想以上に守備が堅くて手こずった。後で聞いた話によると先生達も予想外だったらしく、たくさん謝罪を貰った。
私はそんなものより傷を負って戻ってきた七松くんのことが心配でたまらなかった。
七松くんは迫る追っ手の中、私に文を預けてその場に残ったのだ。
帰ってきた彼は雑巾の様にずたぼろだったけど、意外に軽傷の様で今は目の前で元気に穴を掘っている。
唐突に振り返ったから驚いた。
「そういやさァ、知ってる?」
「え?」
「あの城に忍び込んだの私達だけじゃないんだって」
「うそ」
「本当本当。でもそいつらは相当な痛手だったみたいだよ。今は医務室で寝込んでる」
「…………」
「実は矢羽根でね、合図されたんだけど」
「何を?…まさか応援?」
「うん。でもあっちに行ったら追っ手が全部お前の方に流れちゃうだろ」
また穴を掘り始める。
「だから応援は行かなかった」
「そっ、それなら私なんか放っておいて良かったのに!」
「私は名前が無事ならそれでいいんだ」
ずるいかな、って笑った。
そんなことない。
彼がこうするべきだと判断したならば私が口を挟む事ではないのだから。
ただでさえ足手まといなのに。何も口出しはできない。
でも。
「でも、本当の実践でそうなったら、今日みたいな真似はやめてね」
そう呟くと、少しだけ悲しそうな顔をして、穴を掘るのを止めて、立ち上がった。
「名前は怒るかもしれないけど」
「…………」
「きっと何回も繰り返すよ」
盲目的に私を映している。快晴に似つかわしくない視線だった。
七松くんって意外に難しい子なのかなって思った。
唐突に彼の足元に墓穴が見えた気がした。