(すべて愛おしい)



「ああああの、立花くん…」
「なんだ」
「やめてもらえないかな」
「無理だろうな」
「お腹冷えるし、は、恥ずかしいし…」


控えめな抗議を聞き流す。どうせ誰も来ない。
もう夕飯時だし、作法室には自分と彼女だけなのだから。委員会もないので委員すら来ないだろう。

しばらく掴みあった後で結局負けた彼女は、上着を胸元まで捲り上げられた形で立ったまま好きにされていた。

腰は捕まえているから逃げられない。
背は壁だから逃げられない。

晒された白い腹に再度唇を押し当てると体が震えた。


「ほ、他の女の子に見られてもいいの」
「具体的に誰の事だ?」
「不特定多数だよ!…あの子もその子もみんな彼女でしょ、やってらんないわ」
「そうかな」
「な、」
「大声を張り上げれば、もしかすると誰かしら駆けつけるかもしれないのに」
「……叫ぶよ」
「ほぉ」


やってみろ、睨みつけるように見上げると怯んだらしく口を固く閉じた。
ただ無言のままでも面白くないので、腹に手を這わせてみれば容易に声が発せられた。


「やっ、く、くすぐったい!」
「下らん嫉妬で意地を張るからだ」
「嫉妬なんてしてな、あっ」
「大声を出すと人が来るぞ」
「…………」
「何か言う事はないか」
「ごめんなさい…」


目の端に涙が溜まっている。
まるで納得のいかない顔で渋々謝った。

全く…


「お前は可愛いな」


笑って見せれば、急激に顔を真っ赤にさせてそっぽを向くものだからもう堪らない。
おかげでこの先に進んでもいいかと尋ねるのを忘れてしまった。特に必要も無いが。