「久々知先輩!」
「ぎゃー!!」


そんな突然後ろから抱きつくとか止めてくんない?三郎曰く「ビビり」な俺の身がもたない。
身体の前に回された小さな手を軽く抓ると、さっき俺が発した悲鳴と全く同様のものが彼女の口から流れた。


「なにするんですかぁ!」
「そりゃこっちの台詞だよ」
「うぅ、先輩まで私を突き放す…」
「今日は何があったの?」
「友達が先輩のこと「へたれ」って言って笑いやがるんですよぅ」
「…………」


うんまぁあながち外れてないかもね。
なんて言ったら彼女はきっと噴火する。例え話ではなく、それは一種の災害であり、被害者はもれなく俺。たまに三郎。ごく稀に雷蔵。


「先輩、悔しくないんですか」
「へ?…あー、別に」
「ふぅん」
「……周りに何を言われてもさ」
「?」
「俺には名前が傍にいてくれたらそれでいいよ」


みるみる内に赤くなる顔、黙ってしまった彼女。
少し笑って、「寒いから俺の部屋行こう」そう握った手は暖かくて柔らかくて心底ドキドキした。

俺はちょっと頼りないかもしれないけど、今後ともよろしくね。