彼は学年の中では背が高い方である。
彼女は学年の中では背が小さい方だ。
たったそれだけのことが本人達には死活問題のようで…
「また頭触ったぁ!」
「なんだよ、可愛いから撫でただけだろ」
「かわ…っ、じゃなくて違くて!背が縮んだらどうしてくれるの!」
「それ以上縮みゃしねーから安心しろ」
「むかつく!」
(神経質だなぁ)
心底憤慨している彼女を眺めながら次屋はそう思った。
「大体三之助がでかすぎるの」
「お前が小さ過ぎるんだろ」
「お黙り!」
ばこばこ容赦なく叩いてくる拳(とは言っても胸の辺りが限界ラインだが)を両手でぎゅっと握ると怯んだ。
腰を屈めて、ふと気付く。
(たまには)
「なに、三之助…」
「ちゅーしたい」
「…ちゅ……?」
「変な顔してるけど日本語だからね?したい。してよ」
「や、やだよ!」
「いっつも俺からじゃん、たまには、はい」
少し首を伸ばして顔を近づけると彼女は少し退いた。
結構ショックなんですけど。
下から見上げる丸い眼は明らかに困っている。
真っ赤な顔はもう怒っている訳ではなく。
「……届かないよぉ」
「そこは踏ん張りどころだろ。背伸び背伸び」
「うぅ」
「ほら」
「今日だけだからね」
「ん」
精一杯背伸びして、重なった唇が小さく音をたてた。
身長差カップルって凄い良いよなぁ、と彼が密かに思っていることを彼女は知らない。