増えていく、増えていく。
「さ、さぶろ…」
「んー…?」
「暑い恥ずかしい死にたい」
「そりゃあ困ったなー」
ぐりぐり、額を肩口に押し付けてくる。
暑い、は嘘だ。意外と今夜は涼しいから。
でも恥ずかしくて死にたいのは事実。
そんなに甘えられてもあたし与えられるもん何も無いよ。
「いいじゃん誰も見てないんだし」
「でも……うぅ…」
「いや?」
「違う!…よ」
「はは、赤そうだな、顔」
室内の蝋燭はとっくに尽きて明かりなどどこにもない。
甘えられるのイヤじゃないよ。
好きだもん。
でも。
「本当に、甘えられんのお前だけ…」
「…そんな寂しいこと言わないで」
「じゃあ私が他の奴にこういうことしても良いんだ?」
「違うよ」
「さっきからそればっか」
ねだられるのはやっぱり恥ずかしいから好きじゃない。
でも彼は与えて欲しいから、だからねだる。
「言って、もっと」
それはまるで自分の存在を必死に確認するかのようで、私はその言葉を口にする度どこかが冷えていく。
何かが無くなる。
決して嫌なわけではないのだけれど。
「愛してるよ、三郎」
また一つ、増えた。