ガッと頭を打たれ世界が反転する。


森の中、実習帰りに暴漢と遭遇なんて運が悪い。
ばたばた、額から流れる血が地面に落ちている。

油断した

そう思った時には、瞼が、閉じていて………







……暖かさに目を開ける。

状況が掴めない。

あれ、歩いてる?
違う 誰だこれ、誰かにおぶさって


「ぉ、大木先生…?」
「おう、生き返ったか」


確かに先生だった。

どうやら私は命拾いしたらしい。


「完璧死んだと思ったのに」
「滅多なこと口に出すな」
「先生が助けてくれたんですか」
「まさしく殺られる直前にな。…間一髪だった」
「そっかぁ…すいません、至らないばっかりにとんだご迷惑を」


ぴた、と先生は足を止めた。

長い間眠っていたように感じたけれど、まだ森を抜けてはいなかった。
しかし月は光っている。夜だ。

先生は、ぽつりと言った。


「…あんまりなぁ、無理せんでもいいんだぞ」
「はぁ」
「さっきお前見た時、ワシの方が死ぬかと思った」


この馬鹿、と言われてやっと私は泣いた。