廊下で蹲る彼を見てゾッとした。


「………土井、せんせ!」
「あ」
「な、なに どうしたんですか!?」
「いや…あの、いつもの」


神経性胃炎。


「……………」
「…あの、笑い事じゃないんですけど」
「……、笑ってません!泣いてるんです!」
「わ!」
「そうですよ笑い事なんかじゃございません!もう、こんな若さでそんな持病だなんて…近い内死にますよ」
「そ、そんな」
「あんまり一人で溜め込まないでくれませんか」


よいしょ、と腕を借りる。
体に回して立ち上がると、意外と彼の体は重かった。

遠慮がちな声はシカトの方向で。


「これ以上迷惑かけられ「この場で絶命したいんですか?」
「………すいません(胃が…)」
「謝られても困るんですよ」
「ですが」
「好きでやってるんだから迷惑とか無いです」
「え?」
「…だから!好きなんですよっ、ほら医務室着いた!新野先生この人お願いします!」
「わぁ!」


恥が頂点に達した時、運良く医務室へ辿り着いた。
荒々しく襖を開けて押し込む。

土井先生以外の悲鳴が聞こえた。
善法寺くんと乱太郎くん。

乱太郎くん、もうちょっと優しく扱ってやってよ。
いつか、君達の大好きな先生は絶命するよ。

ぐるぐるする頭を揺らしながらその場を後にした。
最後に先生と眼が合った。
申し訳なさそうな笑顔。

迷惑なんかじゃないんですよ。
ただ、貴方が絶命したら私はどうなるかわかりませんからね。


(しかし好きな人が神経性胃炎持ちだと苦労するなぁ)