一服盛られたのだけは覚えている。

気が付くと見知らぬ薄暗い部屋に横たわっていた。
布団ではなく畳に直に寝転がり、ぼやっと頭を働かせる。


「やられた…」


医務室のような違うような部屋だ。薄暗い。判断しそこねるのは薬の匂いがするからで。

部屋でなくても、彼は。


「おはよう」


すぐ傍から声が降った。
彼からは薬の匂いがする。部屋でなくても。


「な、なんで…」
「ちょっと見るに堪えなくて。ごめんね」
「謝って、済む問題じゃ、ない」


さしずめ独占欲といったところか。
あるいは嫉妬か。
まぁどっちにしろ関係無い。捕まっちゃったし。


「文次郎はどうにかするとして、」
「あいつ関係な…」
「馬鹿言わないでよ、君に触れたんだよ?それを許せるほど釈迦じゃあないんだから僕だって」
「(ごめん文次郎、アンタ死んだわ)」


目を見開いてまくし立てた彼に少しの絶望を抱いた。

じりじり、とまだ痺れる体。動けない。

すがる様に伊作を見たら、にや、と彼が笑うのがわかった。


「伊作、伊作、そんなやらしい笑い方どこで覚えたの」
「君の方こそどうしてそんなに可愛いの?」
「は、歯が浮く…!」
「それは大変だ」


彼の頭が私の目前まで下がり、顔が近付く。
ちゅ、と唇同士が軽く触れ合う。

塞いでいてあげる、と呟いて今度は深い深い口付けを。

もう、どうにでもしてくれ。