「俺、さ、」
「うん」
「本当に好きだったんだ。名前のこと」
「……うん」
ぎゅ、と握られた手から熱が伝わる。
あれ、あたしと兵助ってこんなに体温違ったっけ、なんて考えても今更と言えばそれだけのこと。
静かな室内で向かい合わせで正座で。
あたしの左手は兵助の右手にずっと握られていて。
何やってんだか。
今も、今までも。
ただ、ぎゅうぎゅうと手だけが熱い。
「もう駄目なのか。俺のこと、」
「ごめん」
「なぁ」
「もういらないの」
静かに響いた。
傷付いた顔とか、見たくないから下を向く。
まだ繋がれる手を見たくないから横を向く。
(もう いらない)
久々知兵助もこの体温も、想いも。全部。