お前も私も嘘が上手い。
それでいて互いを知り尽くしているから、だから離れられないんだと思う。
「……よっ、…あ」
「……………」
「さぶろ、ちょっと真ん中引っ張って」
太い髪紐を細い指に絡ませてお前が遊ぶのはあやとりだ。
言われた場所を引っ張ると、ぶつり、と紐が切れた。
膨らむ頬。
「私のせいじゃ無いよ」
「わかってるよ。……もっかい結べば何度だって」
ぎゅ、ときつく切れた両端を結び合わせる。
ふと、手を止めて、結び目から指で髪紐を摘んで滑らせる。
……横を通って真ん中を通ってまた横を通ってそれから…
結局辿り着くのは結び目。
「見て、三郎」
「……………」
「一周したら、元に戻った」
そう言って笑うお前を心から愛しているのに、
またお前は私に「愛してるよ」だなんて容易く嘘を吐く。
(結ばれなくとも結構。切れた両端がお似合いだ)