もういいんだ、私に構うな。



「なにがいけなかったのかな」


畳を見つめて出た言葉、ろくに返事もせずに部屋を後にした。
泣き顔を見たくはないし、嗚咽を聴くのも真っ平ごめんだった。

……謝る気も持ち合わせていなかった。



噂に踊らされただけの話。



(あの娘、別に好きでもないクセに無理してさ)

(立花だって随分気が多いから)

(同情の付き合いって、それって)

(空しいだけなのに)



ぎしり


廊下の足元、ため息に頭を軽く振る。


互いに何かが届かない。いつだってそうだ。
楽して得るものは大層綺麗だけど、優しいけれど、絶対に長続きしない。

余りに脆かったな。

私と、お前。


障害は付き物。

とは言ってもまるで越える力が無ければ努力もしなかったので、それまでだったこと。
それだけのこと、それだけのこと、やめてくれ。


「大好きだったのに」


追いすがる気配があった。振り向くことは許されない。
殺してくれたって構わないんだ。