朝、食堂にて。

仙蔵は壁際にぽつりと座って朝食を取る伊作を見つけた。
定食を手に取り、朝の挨拶もそれなりに横に座る。
ため息と共に伊作から発せられた第一声は。


「女の子の胸って柔らかいんだねぇ」
「………朝からいきなり猥談か…」


いなしつつも黙々と箸を進める。
いや、そうじゃなくて、と伊作はぼやいた。

じ、とその横顔を見つめる。
これは何か面白そうな事でもあったに違いない。
少しつついてみるか、と仙蔵は会話を続けることにした。


「しかしお前ら、いつの間にそこまで進んだんだ?」
「だからそんなんじゃないって」
「だったらこんな話運びになる必要が無いだろう」


顔を赤くさせた伊作は観念したように「見てこれ」と首を捻る。
今まで壁際を向いていた方の横顔を仙蔵に見せた。

頬に付いた、痛々しい手形。
仙蔵は一つの仮説を立てる。


「転んだ拍子に こう、手が上手い具合にさ」


そう言ってむくれた伊作。

想像が見事に的中した仙蔵は、声を殺しながら「お前って本当に不運な奴」と笑った。





(あの娘の胸にヒットis伊作の手)