「…はずしてもらえませんか」


ぎっちぎちの縄は体を痛める。いい加減辟易したし、何より不快だ。
こちらの要望を至極丁寧に告げ、尚且眼でも訴えてみるが…
そらされた。

罵ってみる。


「包帯ぐる巻きヤロー」
「喧嘩売ってるのか」
「それさ、過去に何かあるとか痛々しい設定は」
「一切ない」
「わー、興味失せる」
「失礼な奴め」


どっちが。視線、未だに合わず。

そりゃあ彼からしてみれば、こんなちゃらんぽらんを捕虜にしてしまったことを後悔してるのでしょうけど。
私にしてみれば、ただ道を歩いてただけで捕まるとか迷惑極まりない話なのですよ。これは。
まったく不快なんだけど。色々。


「お前、捕虜の自覚は」
「一切ない」
「…………」
「さっきのお返しですよー、だ」


実りの無い会話ににっこりしてみせると、彼は目の前に座り込んだ。
包帯野郎に愛想は無い。けど、やっと合った眼は意外と鋭利で、光ってて、気に入った。


「捕虜の価値は無いんだけれども」


あんた面白いから付き合ってあげる。

益々良い笑顔のあたしに彼は黙って腕を組んだ。どうするのか決めあぐねたのか。呆れたのか。
包帯野郎、いいなそれ。きっと斜め後ろは死角なんだろう。

それと私は凄腕で評判のくの一なんだけど、さて、いつバラそうかな。