彼女の髪をぐいぐい掴んで遊ぶ。


「わ、なに?」
「いや、うん そろそろ切らせてくんないかなーなんて」
「痛い、引っ張んないでよ!切らせない方向でこの間まとまったじゃん、なんで蒸し返すの!」
「だってさぁ…」


もちろん非難は聞かない方向で。
出会った頃より伸びたそれはちょっと雑でいただけない、個人的に。


「…タカ丸は、髪短い方が好き?」
「髪結いとしてはその人に似合ってるのが一番だと思います」
「個人的に!」
「………あんまり長いのも、どうかと」


ふくれた。

その頬を潰すと「じゃあ今度切ってちょうだい」とすっぱり答えが返る。実に単純で扱い易い。


「どうせ好きなのは髪だけでしょー」


吐き捨てて去る。

髪だけだなんてそんな、なんて呟いても居ない意味ない仕方ない。
次に会った時は切ってやろう。どう切ろう?

手が空を切る。描くイメージはいつでも最高な髪結いで。
可愛い笑顔を思い出すとうっかり幸せな気分になった。