夕方を過ぎた辺りから雲行きが怪しいと思った。

風呂からあがり、今日は珍しく帳簿の後始末も無いのでゆっくり眠れるかと布団を出したその時


ピシィッ


反応するより早く、激烈な光が外を奔った。
後付けに伴った雨は地面にぶち当たり、次第に騒音を撒き散らす。


(雷か)


眠ろうとしたのに思い出してしまった。
あいつは雷がすこぶる苦手だということ。

舌打ちをして天井へと飛び寄る。





(何でいきなり、何で何で)


苦手な奴は多かろうとも決して得意な奴はいないと思われる、雷。
夕方から危機感はあったけど、でもでもそんな!

私は苦手というか大嫌いでもう怖い訳で。
光と、一致しない音。
即行で布団を出して寝付こうとした訳で。
布団を頭から被っても解決しないのが、音。


(ま、また鳴ってる…)
(誰か助けて)


突然ガタリ、と鳴った天井にどうしようもなく怯えてしまう。
まさか落ちたんじゃないの雷がおちたんでしょかみなりこわいこわいこわいこわ

どさっ

明らかに何かが落ちた音。
布団を剥がされた。





「………お前って本当に駄目な」
「……………も…ッ」


もんじろー!!

布団から這い出た体はおれに体当たりをかます。
難無く受け止めてやるが、盛大に震え…というか、


「も、もんもん、もんじろ」
「おう。馬鹿っぽいから落ち着け」
「こわかったー、よーっ」
「あぁ、おい、こら」


そんな強く抱かれると互いに薄い寝着同士、危険な事も有り得る訳で。む、胸とか。
肩を掴んで突き放すと顔が、ああまったく。


「出るもん出てんぞ色々…」
「だってぇ…(ずびー)」
「とりあえず、」


寝るかと言い掛けたら


ピシャ、ゴゴゴ…


「むむむ無理っ、おかぁさーんん!」
「恥ずかしい叫びはやめろ!」
「もんじろー!!」
「それも同じだろうが!」


まるで動かない体を無理矢理布団へ引きずり込む。


「もういいからさっさと寝ろ」
「こ、こわ…」
「耳塞いどいてやるから」
「……う、…ん」


片方は俺の腕で片方は俺の手、俗に言う腕枕の体勢で抱える。


「………俺もお前も雷は駄目だな」


しっかり寄り添ったお前は目を閉じ耳を塞がれ呼吸だけを許した。


お前は雷に怯えて。俺はそんなお前に手一杯で。

ぐ、と抱くと柔らかい匂い。

畜生やっぱり眠れねぇのかよ。
せっかく隈も消えるかと思ったのに、雷の阿呆。