「ミヨ、怒ってる?」
「……………」
「(私のせいじゃないのに!)」


やきもきする水軍館内の炊事場。
手元のじゃが芋を見つめる。夕飯の当番がミヨと二人きりとは荷が重い。
昼に、ちょっとしたいざこざがあったから。


「ミヨが「邪魔だから下がってろ」って言ったんじゃん」
「確かに言った」
「じゃあ私は悪くないよね」
「でも義丸と遊ぶことは無い」
「………気にくわなかった?」
「あぁ」


なんだそれ、ミヨらしくないな。
再び訪れた沈黙に憂鬱さは増してじゃが芋を転がす。今日なに作ろう。その前にミヨとの和解が先なのだろうか。

ぼやっとしていると、


「え!?」


突然肩を掴まれ押され倒され視界の隅へじゃが芋がぶっ飛んだ!(もったいない!)
机に背中と頭を強かに打ちつけて眼はまさに白黒状態で、のしかかるミヨに何か反抗出来るわけでもなく、そのまま唇が合わさって口内を深く侵される。
どかどか容赦なく肩を叩いても絶対的に無意味だった。さすが海の漢。ちくしょうなんでじゃが芋手放したんだ私の馬鹿。芋は芋なりに武器になったはずなのに、それにしても本当もったいない…
…………暫くして解放された。
ぜは、と荒く呼吸をすれば見上げたミヨの頬も紅潮していて、やばい。これは。


「ミヨ!」
「もういい、このまま」
「(何する気だ!)ここっ、ここ!ご飯作るところ!間違っても子どもつくるところじゃないからね!?」
「うまいな」
「ちっとも!」




その日の水軍館は普段より夕食おあずけ状態が長引いた。


「ミヨさん何やってんだろ…義兄なんか知ってる?」
「知ってるというか想像がつくというか」
「へ?」
「網問ちゃんにはまだ早いかもねー」
「なにそれ!」