「あの、ちょっと…大丈夫ですか」


町から家への帰り道、海の漢の死屍累々を発見。ぐったり倒れてたり、蹲ってたり、多様な光景でなんとも不気味である。

出来ればあんまり関わりたくないけれど、さすがにほうっておけないので声をかけてみた。一番近くに転がっている、派手な蜘蛛柄の着物の塊に。

こちらに気付きもしないので、背中を軽く叩けば振り返った顔がこの世の終わりのような形相でギョッとしてしまう。


「もし、あのー…」
「ゆ、揺らさないで下さい…吐く…」
「はぁ。何か悪いものでも食されたのですか?こんな集団で…」
「いえ…、これは宿命なのです」
「は?」
「っ、失礼!」


突如顔色が急変し、慌てて押しのけられ草むらに消えた。恐らくもどしている。生々しい音がした。

どうしよう。
結局状況が解らず仕舞いで頭を捻る。
食中毒ではない?
それにしたっていい大人ばかり…。

さっぱり見当がつかず立ち尽くしていると、向こう側から元気のいい大きな声が近づいてくる。
見ると、影が二つ。


「蜉蝣さーん疾風さーん、ついでに鬼蜘蛛丸さん!」
「お迎えに上がりましたよー。元気ですかぁ、生きてますかぁ」
「え、あの…」


二人の青年は間伸びした声で屍達(違)に近づくと、激しく揺さぶった。
息、絶え絶え。


「し、重……やめ…」
「まったくだらしないなぁ」
「僕達もいずれこうなるのかな」
「滅多なこと言うなよ……あ、」


重と呼ばれた青年が顔を上げた。視線が合うと、恥ずかしそうに笑う。
ちょっと肩の力が抜けたついでに尋ねてみた。


「お仲間ですか?」
「水軍の者です」
「なぜこの方達はこの様な…」
「あぁ、只の陸酔いなんで」
「…………おかよい…?」


そんな病気は聞いたことが無い。


「だから俺達が買い出しに行くっつったのに聞きゃしないんだからもう……網問、その草むらから生えてる足、鬼蜘蛛丸さんだから。担いで」
「えー」
「文句言うなよ、俺なんか二人抱えるんだぞ!」
「あの」
「本当にすみません。お見苦しいものを」
「えっとそうじゃなくて…私の家、すぐそこなので回復するまでいらしたらどうでしょう」


首を少し傾けると、目の前の青年二人は再度「すいません」と申し訳無さそうに頭を垂れた。