ばちゃばちゃ


砂浜に座り込み、足だけは海へ投げ出した。寄せる波を蹴り上げると水音が跳ねる。
同時に後ろから非難が飛んできた。


「おい、あんまり浸かるな。冷えるぞ」
「体が?いいよ別に…暖めてもらうから」
「何に」
「間切に」


振り向くと、明るい髪が陽に透けて一層輝いていた。眩しい。眼を細める。間切はぶっきらぼうに「馬鹿言え」と吐いてそっぽを向いた。

熱い季節だ。
自然と暖まるものですが、心までは如何なものか。


「あ、足攣ったよ」
「……………」
「どうしよう間切、立てない。足、足攣った」


しばらく可哀想なものを見るような眼で見られ、逞しい腕が着物の首根っこを掴んで無理矢理立たせられる。唐突な呼吸困難に変な声が出てしまった。
あんまり我儘を言うとこの人は呆れを通り越して露骨に嫌がるので私は口を閉じることにした。
手は繋がれている。
もう何も言うまい。

背中越しにひっそりと、海へさよならをした。