冬に生きる人なのだと思う。いつでも冷えた眼元もそうだけど、なにより透けた青白い肌が冬特有の刺すような空気や穏やかに積もる雪を連想させる。他の季節が相応しくない、というのはさすがに過言だが、彼が彼として息づくためには冬にその存在があるべきだ。笹山兵太夫というのはそういう人だった。

落葉も大詰めとなり土肌は赤や黄で鮮やかに埋まっている。ざき、ざき。薄い足袋で踏み締める感覚が、とうとう六年目の秋を迎えたのだと実感させる。
すっと伸びた綺麗な脚が地面を蹴り上げた。ざぁっと軽い音を立てて見事な色が舞う。頭上の木々にはまだ微かに葉が残っている。それをずっと見ていたら腕を引かれた。


「ぼーっと上向いて、どうしたの」
「…早く冬が来ればいいなって」
「お前と付き合って何年だっけ」
「三年?」
「あれも冬だったよね、確か」


馬鹿みたいにほっぺた赤くしたお前が僕に言ったんだ。


「好き、兵太夫」
「そうそう」


彼は身を屈めて朱色の葉を拾う。綺麗、と呟いた後で私にそれを押し付けた。


「それを思い出すから僕は冬が好き」


黙って葉を受け取ると、真白い肌を少し染めて兵太夫は笑った。