俺は大きくて彼女は小さい。例え一流の狙撃手だろうが銃が無ければただの人。それは俺も彼女も共通することだけど、銃が無いとして二人のうち強いのは、さぁどっちでしょう?


「わ、若、」


恥ずかしそうに声を出す彼女の肌はほんのり赤く染まっている。滑らかな肩。傷。浅いけれど、背の中心まで広い範囲に渡った蛇のようなそれを、指の腹で撫でる。ぴくり、と彼女が跳ねた。上半身だけ着物をはだけさせ、前は布で隠している。そんな必死にしなくても、そうあっさり見てもつまらないし、とんだ杞憂だなぁと他人事。


「あの、若太夫…」
「んー?」
「薬を塗ってやると言われた気が…」
「気のせいだよ」
「え」


あの、とか うー、とか籠った口から途切れ途切れで流れる言葉は正直誘ってるようにしか思えない。それも俺が背中に頬を擦り寄せたらやがて消える。俺には母さんがいないから女の人の肌がどういうものかよく知らなかった。触れるだけで気持ちがいい、夜のせいで青白く光っている、目線のすぐ横に傷がある。痛々しい、忌々しい傷。


「ごめんね」
「それは、」
「守れなくてごめん」
「…私の台詞、ですから」
「違うよ」


気付かないの?と聞いたら首を小さく傾げる。常日頃から若太夫は本当に鈍感なんだからと呆れる彼女の方がよっぽど鈍感だと俺は思う。互いに恥じて沈黙。夜は長いから、いいじゃない。もう少しぐらいは。