「ヤバくない?」
「大丈夫だよ」


草影をそっと掻き分けると、見慣れない忍者が一人いた。ざくざく土を掘って、何か探している風だった。私と団蔵は息を殺してそれを見つめている。張り詰める緊張感はここ暫く味わっていなかったから、なんだか変な感じだ。まだ慣れない。


「かったりぃなー」
「早く帰りたい」
「あれ殺んなきゃ帰れないんだぜ?」
「わかってるけど…」


こちらに気付かない忍者はまだ何かを探している。忍術学園の見取り図。本当は全然別の場所に埋まってるんだけどそんなの教えてやらない。ここ数日うろついているその忍者の始末を、学園長は真っ先に団蔵に命じた。理由、それは団蔵が最も好戦的且つ血を厭わない性分だからで。ちなみに私がここにいるのはいわゆるストッパー、万が一団蔵が見境をなくしたらなんとかして止めろと念を押された。なんとかってなんだ。無理だろ。どう転んでも私が団蔵に敵う筈がないのに、虚言。


「でも興奮するよな、こういうの」


潜めた声でも充分伝わった。こいつ本当に戦闘馬鹿。


「相変わらずだね団蔵…てかさぁ、なに、この手」
「スキンシップ」
「いらん!」


私の肩に回された手を抓ると予想外に大きな悲鳴が上がった。うっかり気が動転した私は軽い頭を叩いた。何度も何度も夢中に殴りつけているうちに人の気配。忍者が目を細めて私達を見下ろしていた。このひと馬鹿だ、と冷静に思った。私達に気付いたなら接近せずに忍具を飛ばすなりなんなりすればいいのに。色々積み重なってやりきれない思いが満タンになった私は吠えた。


「見つかったじゃん、もう!」
「なんかグダグダになってきたなー」


忍者は問う。


「忍術学園の者か?」


にやついている相手に対し私は沈黙する。おっさん気色悪いよ、その顔。余裕そうな団蔵の安い挑発に乗った忍者は一瞬で小刀を取り出して空を切った。団蔵が笑う。俺 好きなんだよ、こういうの。
私が止められる訳ないじゃんか、学園長の馬鹿。