悪趣味だと思う。
だって一体どこの何が可愛くて毒虫なんぞがまんべんなく室内にひしめいているのだろうか。私は三治郎の部屋を訪れる度にそう考え込む。
委員長の義務?責任?なにそれ?


「三治郎」
「なーに」
「この部屋怖い」


おや、と目を丸くしてみせる。続けてぱちぱち瞬いたそれに気を取られた。三治郎は意外に睫毛が長くて可愛い顔をしている、それなのにこの部屋はなんだ、ちっとも可愛くない。虫なんか可愛くない。


「ところでいつまでそこにいるの?」


私と彼の距離は襖の外と室内の奥、決して近くはなかった。だって怖い。彼以外の人間が入ったら死んじゃいそう。
毒蝶が羽ばたく。三治郎は自身の指先にとまったそれに笑いかけている。うわぁぁ怖い。


「入れないよ!」
「ふーん」
「誰か殺したい相手でもいるの?」
「いやだなぁいる訳ないじゃん」
「本当かな」
「そんな相手いたら毒虫なんか使わずにさっさと殺すもの」


そうかな、そうかもしれない。可愛い顔して結構容赦ないもんね、三治郎は。
丸い目でじっとこちらを見ている。吸い寄せられてうっかり部屋に入ってしまいそうだ。


「名前、おいでよ」


あ、そうやって殺すのか。
足元でガサガサと何かが這う音がした。