「虎ちゃんの筋肉いいよねえ」
「正直な話セクハラだと思うんだよね」


ぎゅうぎゅう二の腕や背中を触っていたらついに呆れた声を出した。無視する。


「腹筋触らせてー」
「勘弁してよ」
「わぁ、硬いね!」
「(聞いてないし)」


風邪引いたらどうしてくれるのさ。布団でのけぞった喉が不満そうに鳴る。それも無視。
私は虎若の体が好きだった。学年一大きいその体は無駄な肉は一切省いて構成されていて、筋肉好きの私には実に興味深い。
はだけた寝着は私のせい。風邪を引いたら私のせい。それで結構。
容赦なしに手を這わせていたら、唐突に掴まれて阻止される。


「と、虎ちゃん?」
「せっかく我慢してるのにさぁ」
「え」
「触らせてあげたんだから」


引っ張られて反転した視界。天井と虎若しか映さない。
肩を撫でられたのがくすぐったくて、声を上げたら彼は喜んだ。


「今度は俺の番でしょ」


斜めな笑顔は不適な色をしてみせる。
本当のセクハラはどっちでしょうね?