信じらんない!


「ちょっ、兵太夫!兵太夫!」
「うるさいな、なに?」


どたどた学園内を走り回って、やっと見つけた兵太夫を捕まえる。
うぜぇ。そんな顔をされても絶対怯むものか。多少は怖いけど。


「大袈裟に間抜けな音撒き散らして僕の名前呼ばないでくれる」
「これどういうこと!」
「はぁ?」


私は彼の鼻先に一枚の紙を突きつけた。その紙は先程街へお使いに出た際に瓦版から剥がし取ってきたものだった。時代錯誤なブロマイドが印刷されていて、その横にでかでかと印字されている恐怖の一言。


「ミスコン優勝ってなに!?」


しかもこれ兵太夫だし!

まだ混乱している私をよそに、兵太夫は紙を一瞥すると何も言わず奪って放り出した。反射的に追いかけてキャッチする。
彼は至極興味が無さそうに言った。


「授業の女装で町に出たら成り行きでそうなったんだよ」


お前、なに。羨ましいわけ?

鼻先で笑われる。
っていうか私は悔しいのですよ!彼氏の女装がミスコン優勝だなんて死んでも認めたくない。いくら美人でもね。