「こういうの、良くないです」
「そう?」


唐突な真夜中の襲撃にはさすがの彼も対応できなかった。布団の上から馬乗りしている私にか細い抵抗。
説得は効かない。そんなの知ってるくせに。


「事務の見回りはどうしたんですか」
「君で最後だよ」
「…他の連中にもこういうこと、してるんですか」


侮蔑する様な真っ黒い目。その色には、少なからず嫉妬も見えた。自惚れではない。確信。
不意に入り込んだ月明かりがうっすら彼の頬を滑る。布団に流れた髪も眼と同じでどこまでも黒ずんでいる。薄い唇。可能な限りに声を殺した微かな呼吸音と上下する胸。
潔癖な美に私は発狂しそうだ。


「他の子にはしないよ」
「…………」
「君だけだよ、庄左ヱ門」
「どうだか」
「信じる信じないは自由だけど」


大事に大事に頬に触れる。少し熱い。そのまま指を滑らせて顎をなぞって喉まで線を引けば、小さい声がした。慌てて手で口を抑える。私はその手さえ許さず、両手で外して、深く口付けた。
どれだけ冷静に振舞っても彼の内にある雄は反応している。無駄だ。
どうせ逃げない。
顔を離すとのぼせた目が私を映している。


「朝まで、まだ時間があるよ」


何して遊ぼうか。耳元で囁くと顔を背けるようにした。
露になった綺麗な首筋が堪らなく愛おしくて、その肌に静かに唇を落とす。