そこらの女より綺麗な彼氏なんて


「許すまじ 兵太夫」
「いきなりなに」


むかつくんだけど、と鼻を鳴らして笑いやがる。むかついてるのはむしろ私なんですよ。
まぁ見事に性格も口も捻れたもんだ。…一年の頃と比べて。


「なんて綺麗なお顔なんでしょう」
「こればっかりは産まれる時に授かるモノだから仕様が無いよ」


残念だったね、名前
くつくつ、笑う。
(本当にむかつく!)


「よくも言ったわね」
「その失敗顔とも六年付き合ってるんだから誉めて欲しいぐらいだよ」
「しっ…、誰が誉めるか!」


もう知らない!

その場から出ようとしたら、引っ張られて回る視界。頭をしたたかに打った。


「った…!」
「冗談だって」
「うるさい もういい」
「すねても変わんないからそのツラ」
「すねて無っ……んん、」


押し倒されて、覆い被さられて、馬乗りで。
ちょっとした問答は静かに終わった。


「可愛い、名前」
「…心にも無い事言わないで欲しい」
「可愛く無い女と六年付き合う程物好きに見える?」
「………」
「ついでに僕は嘘が得意」
「金輪際お前の言う事は信用しない!」
「愛してるよ」


それだけは信じたい。
その、女より綺麗な顔に惑わされて、散々愛を嘘吹いて夜が明けるのだ。

(全くいい性格してるわ)