なんでもない日に八がプレゼントをくれた。相変わらず脈絡のない、掴めない行動をする人だが彼氏が指輪をくれたというのはやはり嬉しい。休み時間、クラスが違うので廊下から教室の窓越しに唐突にぽんと真っ黒い箱が投げ込まれた。爆弾かと思ったけど開けたらなんの飾りもないシンプルな銀色の輪が台座にいた。お礼を言う前に八は消えていた。誕生日にはたけのこの里を寄越すような奴なのでこれはサプライズ過ぎて心底感動したのも事実だが、ある問題にぶちあたりすぐに私の顔は曇る。あまりにも致命的な問題だったので起立の号令にさえ反応が遅れた、問題、それは指輪が私にはぶかぶかだということ。親指ですら簡単に抜け落ちてしまう。偏頭痛を感じたが、察するところこれは八サイズなのではないだろうか。あいつ選ぶとき自分がはめて合ったやつ買ったな。中々やってくれる。これが兵助とかだったら事前にきっちり彼女のサイズ調べていくんだろうなー…、なんて愚痴垂れるほど野暮じゃない、さすがにね。

(しかしどうしたものか…)

緩いとはめていても意味がない。なくすのも嫌なので、考えた末、ネックレスに通すことにした。せっかくのプレゼントだしきつくてはまらないよりはいいじゃないのと良い方向へ納得し、とりあえずお礼を言わなきゃな…次の休み時間あたりに。授業は寝よう。変な汗かいて疲れたから。



終了の号令も机に張り付いたままやり過ごした。意識の隅で聞いてはいたが体が動かなかった。寝ぼけ眼の私が腰を上げる前に荒い足音が接近していた。八か。手間が省けていいや。ずんずん教室に入ってきた八は開口と共に顔の前で勢いよく手を合わせたのでびっくりした。


「ごめん!俺馬鹿やった!」
「あ、大丈夫だから。ネックレスに…」
「こっちがお前の!」
「へ!?」


全く同じ爆弾のような黒い箱を手渡される。開けると台座に見慣れた銀色の、少し小さいサイズが収まっていた。


「え、え、なに」
「なにってペアリングだったんだけど…はめよーとしたら小指ぎりぎりでさぁ。そっちでかかっただろ」
「…はい」
「ども」


慌ててネックレスから指輪を外して八に渡すとそれは八の薬指にぴったりで、今貰った指輪は私の薬指にぴったりだった。サイズ知ってたのかな。やば、なんか、泣きそ…


「こういうの恋人!って感じするよなー」
「八」
「え」
「大好きー…」
「な、なに泣い…ちょっと!」
「おーい八が彼女泣かせてんぞー破局だ破局ー」
「三郎お前どっから湧いて…!」