「うわっ」
「おはよ…うわっ」


登校中、もうすぐ校門だというとき真正面に冨松がいた。あいさつしようとして同じ声を出して同じ顔をしたのは仲良しだからとかでは決してなくて、互いの首元に巻かれているものが問題なわけで。


「同じだね、マフラー…」
「お前それどこで買った」
「親が買ってきたんだけど」
「理由も一緒かよ!」


マジありえねーと喚きながら外したマフラーをクソでかい指定鞄に突っ込んだので私もそれに倣う。直に校内に入るから用済みだし、なんだかすごい気恥ずかしかったからだ。
下駄箱から上履きを引きずり下ろし、先に行こうとする冨松の足元に注目する。


「あ、踵潰してる。いけないんだ」
「うっさいな」
「掃除当番とかはちゃんとするくせにちょいちょい不真面目だよね」
「うっさいっての」
「うぉぉーっす!昨日ぶり!!」
「お前もうるせぇよ」


毎朝用も無いのに教室に一番乗りしている神崎くんが冨松に突進してきた。その額をぐいぐい片手で押して踏み止まっている横を摺り抜け、私は自分の席へ向かう。クラスメイトはちらほら座っていて、挨拶した友達は宿題をやっていた。その机に置いてある物に注目する。こ、これは…


「もういいからどけよ馬鹿左門、入れねぇだろ」
「あれ?そのマフラーさぁ」
「なんだよ、出すなこら!(まさかさっきの見られてたんじゃ…!)」
「俺と一緒!」
「ぶっ」


喧しい方を見ると神崎くんも同じマフラーを振り回していた。私も友達と二人ぶんのマフラーを手にして突っ立っていると彼女は大笑いした。ここらへんで買ったらそりゃ被るよねぇ、だってさ。振り向いた冨松はやっぱり私と同じ顔だった。

結局四つ同じ物が存在するわけだけど、でも冨松と遭遇したときほど恥ずかしくはなかった。多人数の力って素晴らしいものだ。これから何人が同じマフラー巻いて来るのかなぁ。