もう三日と会わぬ先輩が恋しい、そんな旨を口から零すとそこはかとなく横で聞いていたらしい滝夜叉丸が「きもい」と率直な感想を告げる。きもいと言われる筋合いはない、そもそもなぜお前がここにいるなどと怒る気にもなれなかった。そんな労力があるなら先輩を探しに当ても無くさ迷っていたほうが百倍マシだ。そうだ探しに行こう。どこにいるか知らないけど。

と、外に出て三歩も進まない内に地下へ落下した。落とし穴だ。掘った奴の心当たりはあるがいかんせん面倒くさい電波な奴なので会いたくないと思っていたらひょっこり上から覗く顔があった。綾部だ。会ってしまった。無表情で大成功ーと歌うので、先輩を知らないか問うとどこかへ消えた。なんとか穴からはい出ると、今度は満遍ない笑顔を顔面に貼り付けた綾部がいた。意味がわからない。しばらく困惑したまま突っ立っていたけど目的を思い出して歩き出す。後ろから、どうしたの?と聞かれたので、どうしても先輩に会いたいんだと返すと「きもい」と言われた。どいつもこいつも。

タカ丸さんが一瞬で先輩に変わった。否、この瞬間には既に理解できていたが、先輩がタカ丸さんだったのだ。なんてこと。


「だっ…」
「なにその顔」
「騙すなんてひどいじゃないですか!先輩を探してたのに」
「いやだな、私はずっと三木の傍にいたよ」
「え」
「変装の実習で。気づかなかったでしょう」
「ずっと?ですか?」
「この三日間は」


成る程、してやられたわけですね。それにしたってずっと先輩が傍にいただなんてもう衝動が抑えきれない、堪らず飛び付いたら「きもい」と言われた。気の済むまでどうぞ、先輩になら何言われたって平気なんですから。