腰を思いきり叩かれる。良い音を立て、あんまりな痛さに声も出せずその場に崩れ落ちた私を、先生はにやにや笑いながら見下ろしていた。


「いっ…いた……」
「まーた腰が曲がっとるぞ、しゃんとせい」
「だからって力一杯叩かなくても…!」


両手を床に付いて荒い息を吐く。そのままゆっくり慎重に起き上がる。筈だった。
不意に先生が私の両腕を掴んでこれもまた力いっぱい引っ張った。強制的に立たされた私の腰は度重なる衝撃に耐えられない。もし人体の核が心臓ではなく腰だったらとっくに滅びている、そんな感じだ。


「たかがイメトレでそんなに腰を引く意味は無いだろうが」
「う、」
「やっぱり無理!お前にくの一は無理!」
「うるさい!」


先生はひとしきり無理じゃ無理じゃと呪いの様に繰り返した後で今度は両肩を掴んだ。
真っ黒い瞳に私が映っている。有無を言わさぬ強い視線だった。
腰が機能していないので先生の力によってやっと立っている状態の私は目が逸らせない。


「名前、お前そんな躍起にならんでも他に道は幾らでもあるだろうよ」
「…ありませんよ」
「なんでそう思う」
「………別に」
「まったく…」
「でも私、必ず立派なくの一になってみせるわ」


そしてあなたと一緒に戦いたいんです、そんな旨を告げると先生は渋い顔をして、まずはその腰どうにかしろとだけ返事をした。